きっかけは部長の一言だった。
「1年生、ちょっと飲み物を買ってきてくれないか?今日は天気がよすぎる」
確かに。この時期にしては暖かすぎる。なんて些細なことだったのだけど、先輩方がふざけて、コーヒー、ミネラルウォーター、レモンティー、お茶、と次々と言い始めたものだから大変。先輩方、誰がそんなのを聞き取れるんですか!・・・しかし、沢渡がすくっと立ち上がった。
「2年の先輩方はよろしいんですか?」
は?本気かよ。ということで2年も便乗して飲み物をオーダーすると、
「重そうなので、一人連れて行きます」
と、1年の男子を連れて、さっさと部室を後にしていった。
「本当にちゃんと合ってるのかな?」
残された部員たちは、その話で持ちきり。終いには、ちゃんと買ってくるのかどうかで賭けをしようという者まで現れた。・・・そこで朝霧を見ると、彼もまた不安そうな顔をしているから、これは分からないぞ。
そして待つこと数分。
時間と荷物のわりには息も切らせず、
「部長どうぞ」
から始まって、一人ずつオーダー通りの缶やペットボトルを手渡したものだから、これにはさすがに拍手喝采。
「部長お釣りです」
しかし当の沢渡はそれでも平然としているものだから、今度は大爆笑。
「いいよ、釣りは取っておきなさい」
その言葉に、改めて拍手が贈られたのだった。