もう俺も、あらゆる憶測に振り回されるのは嫌になったので、部活のあと、沢渡、朝霧、そして美智の四人で食事に行くことにした。
「先輩にご迷惑をおかけしてしまったようで、申し訳ありません」
・・・その礼儀正しさも、これまでの生活の影響というわけか。
「沢渡、たかだか高校生の一年先輩に対して、そこまで丁寧な敬語を使ってくれなくていいよ。そのあたりが、周囲の戸惑いにもつながっているんだよ」
「・・・すみません。我が国の学校というのがよく分からなくて、大いに戸惑っているのです。・・・浮いていますか?僕は」
・・・俺のところに来る沢渡情報は、あまり好意的でないものが多い。実家は一般庶民だとか、朝霧と行動を共にしすぎているとか、表情があまり顔に出ないとか。
「周りが必要以上に警戒しすぎているというのが大きな原因だろうけど、彼らは単純に驚いているんだよ。今までにこんなに出来た人間を見たことがなかったから。俺が思うに、お前は人の上に立つような人間だ。他人の反応なんて気にしなくていい。もしお前が学校生活で戸惑うことがあるなら、はっきりそう言えばいいんだ。お前が何も言わないから、彼らも何も言えない」
はあ、と、彼は朝霧のほうを振り返った。
「そうだろ、朝霧。沢渡についていれば絶対に間違いがないから、お前はサポート役に回っているんだろ?」
朝霧は驚いたように俺を見た。
「その通りです。彼は、勉強や運動はもちろん、他人の気持ちを考えたり、新しいことを考えたり、実際に行動に移したりすることに長けています。僕は彼を信頼しています。だから彼のために僕が出来ることがあるのなら、何でもしてあげたいと思っています」
・・・今度はこっちが驚く番だ。随分はっきり言い切ったな。逆にそこまでさせる沢渡の底知れぬパワーに、恐れを感じるくらいだ。
「だったら沢渡、お前はお前のままでいいんだよ。・・・心配するな、お前には役者の才能も大いにある」
・・・沢渡は、まだよく分からないといった様子で、黙って頭を下げた。