クリウスでは遠足に好きな目的地を選べるそうで、僕は朝霧と古都の名跡を歩くコースを選んだ。希望調査は早い時期にあったのでよく分からなかったのだけど、たまたま上柳さんも一緒のコースになったようだ。昨日兼古先輩から言われたようにあまり近づき過ぎないように、でも、どうも彼女の様子が昨日までとは違う気がする。・・・遠足なのだから楽しいはずなのに笑顔を見せない。それに僕のことを少しも見ようとしない。まさか、兼古先輩が彼女にも何か言ったわけではないと思うのだけど。
「どうしたのかな?」
いつも明るく活発な彼女らしくない。
「でも、僕たちが校内で撮影していることはかなり話題になっているみたいだよ。君は撮影に集中しているから気づいていないかもしれないけれど、いつも野次馬が凄いんだよ。加えて、時々女の子たちの冷ややかな声が聞こえてくるときもある」
「それは僕のせい?」
「いや、沢渡のせいって訳ではないと思うけど、・・・つまり、上柳さんに嫉妬しているんだよ」
・・・そんなこと信じられない。僕には相変わらず男子も女子も近づいてこない。もう僕は気にしないことにして、意見を言うべき時にはきちんと言うようにしているけれど、彼女が悲しそうにしているのには耐えられない。
「話してくる」
まずは、原因を突き止めないことには始まらない。
「やめておきなよ」
「どうして?」
朝霧にしては珍しく、強く引きとめようとしてくる。
「君が行ったら、余計ややこしいことにならないかな?」
「でも、明日も撮影があるんだよ、しかもクライマックスの。うまくいかなかったら、先輩方にも迷惑をかけてしまうじゃないか」
僕は彼女のもとへ行き、事情を聞くことにした。