昼休み、僕は担任の元へと呼ばれていた。
「沢渡、お願いだから、授業中に訂正するのはやめてくれないかな?」
ちなみに、僕が次期皇太子であることを知っているのは学長ただ一人である。殿下はまだまだお若いし、たかだかこの3年間で僕の状況が変わるとは思えないので、余計な気を遣わせないようにしたいというのが、陛下のご意向だった。
「しかし、間違っているものはしょうがないではありませんか?束の間でも、他の生徒がそれを信じてしまうことは危険なことです」
「だけど・・・、僕の立場ってのもあるじゃないか。生徒の前で否定されるなんて、僕の信頼はなくなっているに等しい。大体、君の情報はタイムリーすぎる上に深すぎるから、そこまで試験に出ることはまずない」
「そうは言いますが、僕としては、試験のためではなく、生きている今に興味を持ってくれたらと思ってのことなのですよ」
ムムム・・・と担任がうなる。彼はまだ大学を卒業して2年だという若い社会科教師である。確かに教科書が書かれた頃と事情が変わってしまうのは仕方ないことだけど、それを知らせないままでいるのはどうかと思う。それで授業中に意見することになるのだけど、どうも評判がよくないらしい。
「僕だけじゃない。他の先生方も、警戒していらっしゃるよ。・・・君はいったいナニモノなんだい?」
「僕は、沢渡希、15歳。ごく普通の高校生ですが、少々情報オタクの気があるかもしれません」
あぁ~とばかりに、担任は額に手を当て大きなためいきをついた。
「もし気になることがあれば、授業の前に教えてくれないか?そうすれば僕も冷や汗をかかなくて済む」
「嫌ですよ。貴重な休み時間がなくなるではありませんか」
「そう言わずに、なあ」
・・・手を合わせて懇願してくる様子を見たら、何だか気の毒になってきた。僕のほうも、授業中に落ち着けそうだから、そうしたほうがいいのかな?