不良役でストレスがたまるということは、俺の本性は善人だ・・・。
俺ならもう少し他のところでそのエネルギーを使うだろうな。最近は役に力を注ぐあまりに、部活が終わるとすっかり疲れてしまっている。
「祐輔、大丈夫か?」
部長が声をかけてくれる。
「俺はもう年ですかね」
「何言ってんだよ、もう」
そして笑って、俺の隣に腰掛ける。
「正直、どのくらいまでいけると思う?」
しかし部長はすぐに真面目な顔に戻って言った。そうだ。我が演劇部は最近着実に順位を上げて来ている。部長はその立役者ということになるのだけど、ここに来て全国大会に進めないなんてことになったら、俺自身も困る。今までリードして来てくれた3年たちに、申し訳が立たない。
「全国大会には行く気でいます」
「それは当然だ」
ですよね。
「でも、その全国大会でどこまで進めるかは、俺にも予想がつきません。もちろん目指すは優勝ですけど、そううまくいくかどうか・・・」
「何が足りないと思う?」
・・・いえ、そう聞かれても。今の俺は自分の役を務めるだけで精一杯なんですよ。
「それは美智に聞いてみたほうが・・・」
「だって、清水さんは俺に悪意を持っている。そんな彼女の意見をまともに聞けるか?」
それは聞き捨てなりませんね。
「美智ももちろん、優勝したいと思っていますよ。よい作品に仕上げることは、みんなの共通目標じゃないですか」
「そのはずだけど・・・、俺は間違っていたのか?」
それは何について?
「でも今更後戻りはできない。今ある材料をもとに、最善を尽くすのみだ」
・・・それは、やっぱり沢渡のことを言ってるんですか?