6/20 (土) 16:00 混乱

バトルは、舞台の上だけではなく、舞台の外でもあった。

 私たちクリウス演劇部は無事に全国大会進出を決めた。ただし、予選2位での通過となったので、部長は肩を落としていた。・・・私も予想外のことで驚いている。これでは全国大会優勝云々以前の問題だ。

そして表彰式が終わり、誰もが複雑な心境でロビーに出たとき、事件は起こった。

「すみません、兼古さん。写真を撮っていただけませんか?」

しまった。2位のショックで、こうなることを忘れていた。

「ゴメンね、今そんな気分じゃないんだ」

行こう、と祐輔がそっと私の腕をつかんで歩き出す・・・去年の比じゃない。ふと気づくと、私たちの周りには、すっかり人垣ができてしまっていた。クリウスがそんなに珍しいのか?・・・部長だけでなく、祐輔がこんなにも人気だなんて。

でも、そう、もう一人いた。案の定、後ろを振り返るとすっかり女の子たちに囲まれている沢渡くんがいた。ただし女の子たちは、うわ~と声を上げたあとはただ眺めているだけ。・・・気持ちは分かる。私も今でこそ慣れたけれど、あまりにも美しいものを見てしまうと、何も言えなくなってしまうのだ。

「ほら、今のうちに」

祐輔が囁いてきたので私も前に向き直り、とにかく早く外に出ようと思った。しかしその瞬間、キャーッという声が次々と伝播し、人垣が一気に迫ってくるのが感じられた。

「危ない」

このままでは将棋倒しに・・・と思った瞬間、私は祐輔に抱きとめられていた。そのまま一方に押し流されていったけれど、痛くはなかった。

「大丈夫か?」

「う・・・うん、何とか」

私たちはうまくドアの間をすり抜けて外に出られたらしい。つぶされるかと思った。・・・でもあとのみんなは?・・・振り返ってみたら、何人かが倒れていて・・・その中に、クリウスの制服が見えたので、背筋が寒くなった。

「上柳さん!」

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