定例議会を目前に控え、宮殿内はいよいよ慌しくなってきた。
こんな時に、といっては申し訳ないが、今回役をもらえたことについては少々戸惑いを感じている。まず僕はすっかり裏方に回るつもりでいたことからの素直な驚き。台本を読ませてもらったら結構出番が多いのに、他の出演者に比べて練習量が少ないということ。そして急に僕への姿勢を変えた部長のこと。・・・実は僕は、殿下のお側にできるだけつかせていただこうと思い、部活を少し休ませてもらおうと考えていた。その予定がすべて狂ってきている。
「申し訳ありません。部活で役をいただきました」
でも殿下にはお話しなければと思い、執務室に伺った。
「何も謝ることはないよ。君の本分は学生だからね、しっかり務めてきなさい」
殿下はあっさりと笑顔で片付けられ、カレンダーをめくりながら、「議会が順調に進めば観に行けるけど、まだ何とも言えないなあ」と楽しそうにおっしゃった。・・・僕的には結構傷つくんですけど。まるで僕が必要とされていないみたいで。
「違うよ、そういう意味じゃない。楽しみができると、頑張り甲斐があるというものだよ」
それは間接的にはお役に立てているということでしょうが、もっと直接的に携わりたいです。
「沢渡くん、そんな顔をするのなら、宮殿への立ち入りを禁止するよ。中途半端はダメだ。足手まといになる」
殿下・・・。
「心配しなくても、見てのとおり毎日残業が続いている。夜だけでも手伝ってもらえると、とても助かるよ」
「分かりました。ありがとうございます」
そうだ、殿下を困らせてはいけない。こんなことをしている間にも時間は流れていく。
「早速だけど、これを訳しておいてくれる?」
「分かりました」
今回の議会では、いくつかの外交問題について審議することが最大の懸案なので、主に殿下の部署で学ばせていただくことになった。殿下のご期待に沿うためにも、いい務めをしなければ。もちろん演劇のほうでも。