6/30 (火) 22:00 あの頃の二人

付き合い始めた頃は本当に楽しかった。手をつないで、いろんなところへデートした。

私たちは部活には入っていなかったので、放課後は時間が空いていた。だから美術館や博物館にはよく行ったし、お買い物にもよく付き合ってもらった。貴くんは基本的に、私がすることを穏やかに見ているタイプ。それでいて、的確な意見やアドバイスをしてくれる。

貴くんのいいところは・・・、一緒にいると楽しいところ。全然余計な気を遣わなくて済む、自然な存在。いつも笑顔で、和ませてくれる。

そんな彼が、ふとしたことがきっかけでバンドのボーカルを務めることになった。私は彼が音楽好きなのは知っていたけれど、歌うところは音楽の時間以外では見たことがなかったので驚いた。もともと彼の声は気に入っていたけれど、歌うのも上手だった。よって文化祭ではとても盛り上がって、私も嬉しかった。

加えて生徒会長にもなった。でもそれでいろいろと忙しくなって、以前のようにデートできなくなったのは残念だったと思う。ただそれも、生徒会長として生徒の前で話をする様子を見ていると、仕方ないと言うしかなかった。付き合っていると逆に分からないこともある。彼は私の彼氏だったけれど、みんなからも必要とされる人だった。私だけのものじゃない・・・。

「意外と嫉妬深いんだね」

そう言って彼は、私を抱きとめて髪を撫でた。

「貴くんのことをよく知っていると思っていたけれど、そうではなかったみたい・・・」

考えてみれば、いつも私が話すばかりで彼の家族のこともよく知らなかった。

「そう?舞は他の誰も知らない僕のことをよく知っていると思うけど?君のことが好きで好きでたまらない僕のことを・・・」

・・・それも知らなかったよ。私のことをちゃんと好きでいてくれたなんて。彼はいろんな人のことを見ているけど、その中でも私のことは特によく見てくれていた。髪を切ったときも、新しい服を着たときも、不安になったときも、いつも一番に気づいてくれた。彼がみんなに優しいのは仕方がない。二人だけのときには、それ以上に私に優しくしてくれるのだから。

しかし、楽しかった高校生活も残すところあとわずかになってしまった・・・。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です