高校生の頃は一緒にいることが当たり前だったから、何ヶ月も会えないなんて最初は辛いだけだった。でも大学で友達から飲み会などに誘われて行ってみると、やっぱり貴くんがいいと思うようになっていった。・・・だったら我慢するしかない。
彼も初めの頃は宮殿の生活に慣れるのが本当に大変だったらしくて、メールの返事すらなかなかくれなかった。だから私はその間に、貴くんとはどんな人だったのか、そして私たちの関係についていろいろと考えることにした。
彼は自分に厳しい人。でなければ優秀な成績を取ることはできないし、いつも笑顔でなんていられない。お母さまが亡くなっていたこと、そしてお父さまが再婚されたと聞いたのも、随分後になってからだった。・・・いつも聞き役に回ってくれるので、私から言い出さない限り、彼が話してくれることはなかった。自分が一番大変だったのにそれでも他人に優しくできるなんて、普通の精神力ではない。
私ももう少し大人になろうと思った。もっと彼から学ぶべきことがあったはずなのに、そのチャンスをふいにしていた。そしてもっと彼のことを気遣ってあげればよかった。でなければ、貴くんがそれほどまでに思いつめて長い手紙を書くこともなかったはず。
半年くらい経って彼から連絡があり、私たちは久しぶりに会うことになった。・・・一瞬見間違えたかと思ったほど、落ち着いて引き締まった表情をしていた。
「ごめんね、ずっと連絡できなくて」
「いいの。随分密度の濃い時間を過ごしていたみたいね。急に大人になったみたい」
「実際厳しいのだけど、その分やりがいを感じるよ。一歩ずつ夢に近づいているようで嬉しい」
「貴くんの夢って?」
私はそれすら聞いたことがなかった。
「人の心に平和をもたらすこと。・・・でも僕は、一番近くにいる舞を傷つけているのかもしれない」
「そんなことはないよ。時々でも会ってくれるだけで嬉しい。今まではいつも私のわがままを聞いてもらっていたから、これからは私がもっと貴くんの話を聞いてあげる。・・・貴くんのことをもっと知りたいの」
「僕のことを?今更?」
冗談交じりに笑う様子は昔と変わっていなかったけど、以前よりも男らしさを感じるようになっていた。その眼差しにドキドキしてしまう。