7/27 (月) 23:30 不安

朝霧って、鈍感なのか敏感なのか・・・。

は、さておき、夏休みに入ったということで、仕事に励める時間が増えてきた。でも、この週末には全国大会が控えているので、まずはそちらのほうに神経を注がなければならない。地区予選に比べていい出来になったか、ならなかったかは、僕にかかっている。・・・僕が増えたというのが、前回からの大きな変更点なのだから。まだ大勢の観客の前に立ったことがないので、どんなことになるのか想像つかない。

「何万人もの前で歌ったことは、緊張したけど楽しかったよ。病み付きになりそう」

なんておっしゃるのは殿下。・・・僕もその場に居合わせたかった。殿下は時々歌を口ずさんでいらっしゃるけれど、本格的に歌うところは拝見したことがない。しかし、マスコミにも取り上げられ評判もよかったので、よほど素晴らしかったに違いない。

「ですが、殿下はVIPに会われたり、人前で演説なさったりと、日頃から慣れていらっしゃるではありませんか」

「でも歌うとなると話は別だよ。僕の本職ではないし、何せ、プロが隣にいたのだから申し訳ないったら。しかもその評判がずっと付きまとうかもしれないんだよ?失敗は出来ないし、気分的には完全にアウェイだった」

「そうですか?結果的には楽しまれたのですよね。それに殿下のファンも多いと思いますよ」

「それを言うなら沢渡くんだって、出て行った瞬間に多くの目を惹きつけることが出来る。その意味では得をしているよ」

そうでしょうか?・・・でも今の僕は、別に舞台に立つのが怖いというわけではなくて、どうなるか分からないから不安になっている。今までそんなことはなかったけれど、突然セリフが全部飛んでしまうかもしれない。それは僕ではなく、他の出演者かもしれない。逆に、演劇に限らず大きな舞台に立つと、普段以上のパワーを出すことがあると聞いたことがある。その不測の事態に臨機応変に対応できるのか、そこまでの余裕は持ち合わせていないように思える。

「初舞台なんて、これが最初で最後なんだよ。それを楽しむくらいの気持ちでいたらどうかな?そしてもちろん、その決定的瞬間を、僕は目に焼き付けようと思っている。・・・楽しみだね」

結局殿下は、お忙しいのに全国大会を観に行くためにスケジュールを調整されたようだ。・・・そしてもれなく結城もセットらしい。また何を言われるか・・・。

でも僕は、オーディションのときの感覚をまだ覚えている。今度もそんな不思議な魔法にかかれるといいけど・・・。本番まであと5日。

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