今日から部活は二週間休みとなり、僕は殿下の元でみっちり指導していただくことになった。そのうち最初の一週間は議会だけど、次の一週間は議会の中休みを利用して外国に出張に行くことになっているので、とても楽しみだ。・・・でもこのところ気になるのは、殿下がお疲れでいらっしゃること。それはそうだろう、昼間は議会、夜は会食、休みの日には遊びに行かれているので、休んでいる暇はない。
今日は早めに宮殿に帰ってこられたと思ったら、デザイナーと打ち合わせがあるとのこと。殿下は普段からお洒落だけど、なかでもKZの洋服を好んで着ていらっしゃる。シンプルだけど殿下をよりエレガントに見せてくれるデザイン、そして話によると、とても機能性に富み、着心地がいいのだそうだ。ちなみに結城も、大柄なため既製服ではなかなか合うサイズが見つからないということで、オーダーメイドの服をいつもシックに着こなしている。
そう、仕事は会議だけではない。夜には晩餐会が開かれるし、空き時間には観光に出かけたり、施設を慰問したりする。我が国をアピールするチャンスを逃してはいけないとばかりに、殿下は数多くの服を用意されたようだ。仕立て上がった服が、ズラッとハンガーに吊るされている。
「素晴らしいですね、ありがとうございます」
殿下もお喜びのご様子だ。
「ですが・・・少々お痩せになられましたか?」
「大丈夫ですよ。おいしいものをたくさんいただくことになりますから、すぐに戻ります」
・・・やっぱり、見る人が見れば分かるというものだ。
そしてKZは、いろいろなコーディネートのパターンを説明していかれた。最終的な決定は殿下の当日のご気分に委ねられているよう。シャツやネクタイ、アクセサリーや靴、小物の組み合わせをあれこれ見せてくださると、それはさながらファッションショーのようで、見ている僕も楽しい。
「それから、急で申し訳ないのですが、仕事をお願いしてもよろしいでしょうか?」
それが一段落着くと、殿下はKZに向かっておっしゃった。
「そちらの沢渡くんのためにスーツを2着仕立ててください。秘書として同行してもらうので、他の仕官たちとあまり差が出ないように、ですが、彼の男ぶりが引き立つようなものをお願いします」
僕のためにですか?
「また、やりがいのある仕事をありがとうございます。私の服が映えそうなスタイルなので光栄です」
いえ、僕のほうが光栄です。さすがにフルオーダーはまだ早いということでセミオーダーになったが、とても嬉しい。