8/13 (木) 23:00 環境作り

事態は複雑なことに発展していた。沢渡さんの調査をしていたのは複数の組織で、それぞれが結託したり偽の情報を流したりし始めたのだそうだ。

「それからインターネットで検索したら、沢渡さんに関して随分多くの情報が流されていたので、驚きました。・・・私は帰らせていただいたほうがよろしいでしょうか?」

「ダメだ。お前はクリウスで教師を務めているのだから、それ以外のところで顔が知られてはマズイ。それよりも、沢渡のそばにいて安心させてやれ。情報部員はいくらでもいる」

確かに。結城さんは情報の怖さをご存知だ。だからこそ、今は仕事が山場を迎えている殿下や沢渡さんに余計な心配を与えないよう、内密にしておくようにと命じられた。と同時に、やはり素性を調べている連中にも、ある程度の情報を与えて満足させるようにとの指示を出された。

でも、沢渡さんが求める人は私よりも結城さんだ。私はいつもお側にお仕えさせていただいているが、これといって沢渡さんの相談に乗っているわけではない。やはりいつも、大事なことは結城さんに相談されているようだ。

そしてその結城さんはといえば、実にきっちりと仕事を分けていらっしゃる。仕事に関しては、殿下、沢渡さん、それぞれ個別にフォローされる。そして、殿下が沢渡さんの指導をなさるときには決して口出しをしない。仕事が終われば、三人でお集まりになりあれこれ楽しそうに話をされているが、その時には仕事の話はなし。そのメリハリのつけ方が、いい効果をもたらすのだろうと思う。

「俺たちとしては、つまらないことで沢渡の才能を活かす機会を逃すわけにはいかない。どうしても外野がうるさいようなら、沢渡のことを公表して宮殿から学校に通わせるまでだ」

「それでは、沢渡さんの学業に支障を来たすことにはなりませんか?」

「これは最悪の事態だけど、仕事か学業かということになったら仕事を選ばせる。そのくらい、今の王宮には必要な人材だ。・・・もちろん、できるだけ沢渡の要望は聞き入れてやるつもりだけどな。・・・これからはいつでも俺がいてやれるとも限らないわけだから、加藤が沢渡の面倒をしっかりと見ること。よろしくな」

はい、かしこまりました。・・・結城さんの愛は深い。その結城さんのご期待に添えるようにしないと。

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