9/9 (水) 22:00 不思議な関係

部活のあとに、部長、そして沢渡と、役について話し合うことになった。三人とも様々なパターンを試してきたのだが、そろそろ役を固めようということになったのだ。

「祐輔には、完璧にイイ男を演じてほしいんだ。そうでないと、対比が際立たない」

「今のところはどうですか?」

「やっぱり、衣装を着けると変わって来るだろうと思うんだけど・・・、ある程度は実費で提供してくれないか。君なら今後、着る機会もあるだろうから」

やはりそうきましたか。そんな予感はしていたけれど、俺はできればあまりスーツを着たくない。それはともかく、やむを得ず着なければならない事情も出てくるだろうから、まあいいか。

「あとは、あまり他の俳優の真似はしないほうがいいんじゃないかな。自分の演技をすることを心がけてほしい。リアリティーがなくなるから」

それなら、今の演技はあまりよくないということだ。考えていかないと・・・。

「そうだ、今から衣装を見に行かないか?実際に現物を見たほうが、俺が求めているイメージも伝わりやすいと思うから」

ということになり、三人で連れ立って、紳士服の店舗を片っ端から見ていった。

部長は、沢渡にやたらと恋愛についての話題を振った。そのたびに彼は・・・いつもの彼らしくなくすっきりしない返事をしたので、その不器用さをそのまま出すようにと言った。・・・どうかな?俺には、恋愛に不器用なのではなく、何か言えない事情があってそんな発言になってしまったのではないかと思えた。

それにしても部長は、今日に限っては沢渡に執着している気がする。・・・常に彼に話しかけ、店に入るたびに試着をさせる。そして沢渡も、変だと思わないはずはないのに、それに穏やかに応えている。この二人、何かあったのだろうか?不気味すぎる。そうだ、部長も、沢渡が陛下の息子なのかもしれないという噂を聞いていないはずはない。そして部長なら、彼に何も聞かないはずはない・・・。

何軒めかの店で・・・相変わらず部長は沢渡に執拗にスーツを着るように勧めた。すると沢渡もとうとう頭に来たのか、「これをいただきます!」と言い切り、それでもにこやかに店員さんと接していた。

部長は食い入るように沢渡が会計をしている姿を見ていた。・・・彼は普通にカードを出し、サラサラとサインをした。それが漢字ではなかったような気がしたけど、それだけのことだ。

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