“今日も行くのか?”
昨夜、先輩は電話の向こうで怒っていた。・・・今週ずっと一緒に昼食をとっていないからね。
「部活のみんなが出ているし、私だけ行かないわけには・・・」
“みんなが行ってるなら、一人くらい行かなくてもいいんじゃないのか?”
・・・そういうこと言います?普通。
“僕より、アイツのほうがいいのか?”
「・・・なんてことを言うんですか」
“僕はただ、まゆと一緒に過ごしたいだけなんだ。それがいけないって言うのか?”
最初はそんな束縛が嬉しいと思っていたけれど、それもだんだん苦痛になってきた。こういうことさえ言わなければいいのに・・・。他は全然問題がないのに・・・。
「でもあと二日で終わりますから・・・。あと二日すれば、今まで通りですから・・・」
“二日経ったところで、土日が入ってしまう。・・・一日くらいいいじゃないか”
なんて大人気ない・・・。そういうことを言われるともっと引いてしまう。でも、それだけのために別れてしまうにはもったいない人だと思う。
「分かりました。明日は応援に行きません。一緒に食事をしましょう」
“よかった。じゃあ、明日ね。おやすみ”
おやすみなさい・・・。
電話を切った後も眠れそうになかった。・・・言えなかったけど、私は兼古先輩の応援に行きたい。そのほうが楽しいのは事実。どうして分かってくれないんだろう?そして、兼古先輩や他のみんなに何て言おう・・・。
どうせなら、学校を休んでしまいたい気分だった。でもそういうわけにもいかない。
今日も朝は、生徒玄関でパフォーマンス。それが終わったときに、兼古先輩を呼び止めた。
「どうして?」
先輩は特に詮索するというわけではなく、条件反射のように聞いた。
「ちょっと、事情がありまして・・・」
すると先輩には思い当たるところがあったようで、頷いた。
「それならしょうがないな。・・・でも、大丈夫か?顔色がよくないよ」
「いえ・・・。大丈夫です」
「何かあったら言って」
・・・兼古先輩はなんて優しいの。いたたまれなくなった私は、お辞儀をして校舎に中に駆け込んだのだった。