10/1 (木) 8:00 天秤

“今日も行くのか?”

昨夜、先輩は電話の向こうで怒っていた。・・・今週ずっと一緒に昼食をとっていないからね。

「部活のみんなが出ているし、私だけ行かないわけには・・・」

“みんなが行ってるなら、一人くらい行かなくてもいいんじゃないのか?”

・・・そういうこと言います?普通。

“僕より、アイツのほうがいいのか?”

「・・・なんてことを言うんですか」

“僕はただ、まゆと一緒に過ごしたいだけなんだ。それがいけないって言うのか?”

最初はそんな束縛が嬉しいと思っていたけれど、それもだんだん苦痛になってきた。こういうことさえ言わなければいいのに・・・。他は全然問題がないのに・・・。

「でもあと二日で終わりますから・・・。あと二日すれば、今まで通りですから・・・」

“二日経ったところで、土日が入ってしまう。・・・一日くらいいいじゃないか”

なんて大人気ない・・・。そういうことを言われるともっと引いてしまう。でも、それだけのために別れてしまうにはもったいない人だと思う。

「分かりました。明日は応援に行きません。一緒に食事をしましょう」

“よかった。じゃあ、明日ね。おやすみ”

おやすみなさい・・・。

電話を切った後も眠れそうになかった。・・・言えなかったけど、私は兼古先輩の応援に行きたい。そのほうが楽しいのは事実。どうして分かってくれないんだろう?そして、兼古先輩や他のみんなに何て言おう・・・。

どうせなら、学校を休んでしまいたい気分だった。でもそういうわけにもいかない。

今日も朝は、生徒玄関でパフォーマンス。それが終わったときに、兼古先輩を呼び止めた。

「どうして?」

先輩は特に詮索するというわけではなく、条件反射のように聞いた。

「ちょっと、事情がありまして・・・」

すると先輩には思い当たるところがあったようで、頷いた。

「それならしょうがないな。・・・でも、大丈夫か?顔色がよくないよ」

「いえ・・・。大丈夫です」

「何かあったら言って」

・・・兼古先輩はなんて優しいの。いたたまれなくなった私は、お辞儀をして校舎に中に駆け込んだのだった。

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