明日から試験なので、朝霧が僕の部屋に来ている。
「どうしてもっと早くから勉強しておかなかったんだ?こんなに分からないままで試験を受けようだなんて、どうかしてる」
「そんなこと言わないでよ。これでも少しは忙しい身なんだ」
はいはい・・・。彼は特に理数系が弱い、に対して、僕のほうはそれらを得意としている。でも・・・、
「違うよ、それは出ないって」
「嘘、そんなこといつ言ってた?」
なんてことになると、それは理解力の問題ではなくて授業をちゃんと聞いているかどうかの問題になるような気がするんだけど・・・。そんなに集中力がそがれるようなことがあるんだ。
「沙紀ちゃんのこと、どう思ってる?」
僕が聞いてみると、その手がビクッと止まった。
「驚かさないでよ」
「そんなに驚くことでもないと思うけど?・・・少なくとも、もし今回の成績が悪かったとしても、彼女のせいにするなよ」
「何言ってるんだよ。そんなこと・・・するわけない」
なんて言いながら、目を泳がせないでくれる?ひとまず、そこを何とかしないと、今僕が勉強を教えても身に入らないんじゃないかな?
実は今日も、上柳さんのこともさることながら、朝霧とのことについても、沙紀ちゃんから相談を受けた。僕としてはまず、意思伝達が得意なほうではないんだよ、と伝えた上で、
「でも彼なりに沙紀ちゃんとのことは考えてるみたいだよ。ただ、どうしていいか分からないと思うんだ。だから何でも言ってあげて」
と答えておいた。今度は朝霧に助言する番だ。
「僕には朝霧の気持ちが伝わっているけど、残念ながら沙紀ちゃんにはうまく伝わってないみたいだ。まずは不安を取り除いてあげないと。そしてそのためには、言葉か行動に移すこと」
うん・・・と、朝霧は頷いたけど、まだ弱気なまま・・・大丈夫かな?
でも僕としても悩みは尽きない。上柳さんは今日も学校を休んでいた。・・・明日からの試験は受けに来るよね?