僕はダメな男なのかな・・・。
僕は僕なりに、沙紀ちゃんのことを好きだったと思う。でもうまくいかなかった。どうしたらいいのか全く分からなかったのだ。
・・・そして落ち込んでいたら、沢渡のほうから僕の部屋に来てくれた。
「世の中うまくはいかないものだよね」
・・・そのセリフを沢渡から聞いても、説得力に欠ける気がするんだけど。
「でも挫折は次のステップにつながる。前進あるのみだよ」
うん、それは分かる。
でも今日、四人で昼食をとったときに思ったのは、本人の前だと意外に大丈夫だということ。今から思えば、僕と一緒にいるときの沙紀ちゃんは不自然だった。彼女らしくない様子でもじもじしていたり、逆にテンションが高すぎたり。なのに、今日はごく普通に戻っていてくれたおかげで、僕としても普通に接することが出来た。
ただ・・・、一人になると、もっと出来ることがあったのではないかと思ってしまう。
「でも僕は、朝霧が朝霧らしくいてくれるのがいい。沙紀ちゃんと顔を合わせるのが辛くないんだったら、これからも四人で一緒に行動できるようにお願いしてもいいかな?」
・・・ああ、それは上柳さんのこと?話は聞いた。友達として出来る限りのことはすると言ったこと。
「でも、お互いに意識しないほうがうまくいくというのは、やっぱり恋じゃないよ。・・・沙紀ちゃんといるときドキドキした?」
「それは・・・したよ。一緒にデートもしたんだから」
「その時、どんな感じだった?」
どんなって・・・、遊園地は楽しかったけど・・・、ドキドキしたけれどそれは、緊張というか、不安のほうが大きかった。
「恋するチャンスはこれからいくらでもあるよ。今は、何が大事?」
「それは・・・ヴァイオリンだね」
「この経験を活かした、味わい深い音色になっていることを期待しているよ」
・・・確かにそうだけど、自分には彼女がいるからって、そんな態度に出られると悔しい。