友達もまた、難しい・・・。
でもそう考えると、沢渡といることはどんなに楽なことなのか、と思い知らされる。男同士の友達はあり得ても、男と女の友達というのはあり得ないのかな?
僕はヴァイオリンを持って沢渡の部屋に行き、一緒に演奏していた。・・・これは僕たちでしかあり得ない、楽しみ方。楽士の僕が言うとおかしいかもしれないけれど、沢渡と一緒に演奏していると気持ちが落ち着く。だから今日は、なかなかの演奏が出来たのではないかと思う。
・・・でも演奏が終わった途端に、ためいきをつく僕たち。
「女の子って難しいな。何だか振り回されているような気がしてならないよ」
さすがの沢渡も少々困り顔だ。今日は、抜け駆けなし!と二人がお互いに視線を光らせていたおかげで、団体行動のまま何事もなく過ぎ去った。でも、帰りの車に乗り込んだ途端に、緊張が抜けてどっとシートに身を沈みこませたのだった。
「あまり個人的には付き合いたくないね・・・」
「でもだからと言って、女の子が嫌いってわけじゃないよな?」
それはもちろんそうだけど・・・、今のところは、テレビや映画に出ている女の子を見ながらかわいいと思っているくらいでいい。
「沢渡は、やっぱり年上の女の人がいいの?」
「クリウスには、残念ながら気になる女の子がいないね。でもだからと言って、年上じゃないといけないというわけではないと思う」
そうなんだ・・・。じゃ、この機会に聞いてみよう。
「どんな女の子が好み?」
どんなかなあ?と、あれこれ思いをめぐらせている様子。
「やっぱり僕は男だから、守ってあげたくなるようなかわいい子がいいかもしれない。でも、大人な女性に惹かれたりもする。だから、絞り込むのは難しいなあ。・・・そう、できれば、いろんなタイプの人に出逢いたいかな?」
「今のままじゃ不満?」
「それとこれとは別だよ。今は今で楽しいけど、デートにすら行けない間柄なんだよ?・・・朝霧がデートに行ったというのを聞いて、凄く羨ましかった」
こんないい男でも満足する恋が出来ないなんて・・・。僕に彼女が出来る日はいつなのだろう。