10/28 (水) 17:45 撮影現場その3

さて、問題の、朝霧と上柳さんのシーン。

上柳:朝霧くん、最近冷たくない?いつも何か考え事をしているみたい。

朝霧:うん・・・、沢渡のことでね。ちょっと厄介なことに巻き込まれたみたいなんだ。

上柳:何かあったの?

朝霧:ある先輩から、よくないことに誘われたみたいなんだけど、どうも断れなかったらしくて凄く苦しんでる。そんな彼のために何もできない自分に嫌気がさすよ。

上柳:それは沢渡くんの意志が弱いってことで、朝霧くんには関係ないんじゃないの?

朝霧:彼が断れないなんて、よほどのことがあるんだよ、きっと。でも詳しいことまでは話してくれない・・・。どうしたらいいかな?

上柳:・・・(考える)・・・分かんない。私には沢渡くんのことってよく分からないから。

朝霧:そうかもしれないけれど、・・・せめて、これ以上僕を落ち込ませないでくる?僕は真剣に悩んでいるんだよ。君だって、悩みがあるときには、そっとしておいてほしいだろ?

上柳:私は誰かに聞いてもらいたい。

朝霧:でしょ?だったら協力して。

上柳:・・・そうだよね、ゴメンね、自分のことばっかり考えたりして。私も朝霧くんに優しくされたいから、今は優しくしてあげたい。・・・私にできることは何かあるかな?

朝霧:・・・だったら、そっとしておいて。

上柳:分かったわ。・・・ゴメンね、邪魔して。嫌われないようにしないとね。(去っていく)

・・・何だか妙に初々しいカップルっぽくて、俺にとっては新鮮に映る。

 

部活終了後、美智と話をしながら、さりげなく1年達の行動をチェックしていた。

「上柳さんが、今度はウチの部まで壊すんじゃないかと心配になってきたわ」

その通り。彼女は被害者だから、という目で見ていたら、今度は何かをやらかしそうになってきた。沙紀ちゃんも大変だ。朝霧と付き合っていたのはわずかだったにせよ、上柳さんは彼に近づきすぎている。そして沢渡もまた、上柳さんのことを気にしてみたり、沙紀ちゃんのことを気にしてみたりと大変だ。

「早く撮影を終わらせないと、もっと大変なことになるぞ」

「でも、今のところは凄く順調よ。・・・なんてことも言っていられそうにないわね」

ああ、頭が痛い。

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