撮影は無事に終了した。その途端に、部員達から安堵のためいきが漏れた。・・・あまり精神面で健康上よくない作品だったな。
そして夜、食事に行くことにし待ち合わせると、沢渡以外のメンバーはすべて集まってくれた。こう言ってはなんだが、沢渡が来ないとなると朝霧もそうなのではないかと思っていたので、嬉しい驚きだ。
俺たちとしては、様子を見ながら、敢えて直接的にはいざこざに関わらない立場をとることにした。現に上柳さんと沙紀ちゃんは自然に話をしている。・・・やっぱり俺たちが気負いすぎたのかな?でも週明けに完成作品を見ようということになると、また話は別かもしれない。
この機会に、と思って、朝霧を誘い出した。
「朝霧、大丈夫か?」
「はい・・・一体何だったんでしょうか?僕には女の子のことがよく分かりません」
・・・俺にもよく分かっているつもりはないけどな。
「今日は、上柳さんたちと話した?」
「はい。二人とも今までのことはなかったみたいにケロッとしていて・・・、沢渡ともども面食らいました」
「これから、いい友達になれそうかな?」
「分かりません。僕たちは出来るだけ、関わり過ぎないでおこうということになりました。僕としても、あんなことがあった手前、沙紀ちゃんとは顔を合わせ辛いんです。・・・まだ」
そうだよな。詳しくは聞いていないが、こう見ていると、朝霧は沙紀ちゃんのことが結構好きだったのではないかと思う。それが今回のことで、幻滅してしまったような感じだ。
「上柳さんはどうかな?」
「それこそ僕にはよく分かりません。・・・これはお手上げです」
今のところ、園田はあれ以来何もしていない様子だ。・・・もう彼女のことは飽きたのだろうか?だから尚更、役に集中することで、雑念を振り払おうとしていたのかな?と思う。
そして彼女の元に行くことにした。
「先輩、私の演技はどうでしたか?」
・・・演技だよな、演技。少し話してみることにしよう。