「沢渡くん、なかなかいい感じだね」
と嬉しそうに響が微笑んでいる。・・・そうだな、出だしは好調だ。
「でも誉めるのはまだ早いぞ。今がよくても、きちんと結果を出せないことには、何の意味もない」
「それはもちろん分かっているけど、・・・いいじゃない、感想くらい言わせてくれても。仕事に追い立てられているときだからこそ、気持ちにゆとりがほしいんだよ」
・・・俺なんか、仕事のことしか考えられないぞ、今は。でもそれでは、行き詰まってしまうのも時間の問題だ。というのは毎年分かっているのだけど、年に一度のこの時期だけは仕方ないのかな、とも思う。
「というか、ゆとりがあり過ぎだろ。わざわざ撮影会まで開かせるなんて、気が利くヤツだよな」
「あれは、偶然がいい具合に重なったんだよ。友人が被写体を探していたのも本当だし、その時沢渡くんが妙に不完全燃焼っぽくなっていたのも本当だから、渡りに船みたいな感じだったよ。凄く良く撮れていたね。結城なんか、惚れ直してしまったんじゃないの?」
「うるさいな、放っておけよ」
・・・ますますニヤニヤした顔で、俺のことを見てくる。
「ねえ、真剣に聞いてもいい?・・・結城が沢渡くんを見る目って、愛があり過ぎない?」
随分、単刀直入だな。
「俺は別に普通だと思うけど?」
「そうは見えないな~。彼女を作ろうとか思わないわけ?」
「今はいいよ、忙しいから」
「本当にそれだけ?近くに綺麗な子がいたら、どうしても比べてしまわない?」
バカ言うなよ。沢渡は男だし、年だって全然違うんだから。・・・何を言い出すんだ、全く。
「怒るぞ。・・・そんなことを考えている暇があったら、さっさと寝ろ」
「例えば、沢渡くんが、眠れるまで側にいてほしい、なんて言ったら付き合う?」
「もちろんだ」
「じゃあ、例えば僕がそう言ったら?」
・・・何だ?そうしてほしいなら、最初から言えよ。いくらでも付き合ってやる。
「やっぱり、不気味だからやめておく」
・・・なら、最初から言うな。