予算の作成では大分苦戦を強いられているみたいだけど、僕は外国に出張中だ。よくもまああれこれと仕事が押し寄せてくるものだ、と思うけれど、こういうことでもないと、ゆっくり食事をしたり外を歩いたり出来ないから、これはこれで楽しまないと。
それからもう一つしなければならないのは、お土産の調達。沢渡くんは旅行に行くという名目で学校を休んでいるので、そのお土産がなければ怪しまれるに決まっている。・・・リクエストがあったのは、部活向けに一つと、クラスメート向けに一つ。何がいいかな?・・・僕が買って来たという真相を知ったら、みんな驚くだろうな。
「お土産を配りたいのですが、お薦めは何ですか?」
僕は、お菓子ならみんなに配れるかと思って、一緒に来て頂いた長官にお尋ねした。
「殿下には、これがよろしいかと思われます」
・・・いえいえ、そんな高価なものを高校で配るのはよくありません。・・・と、そこまで詳しくは話さないが、大まかな事情は説明する。
「でしたら、いろいろお持ちになって選んでいただいてはいかがでしょう?私の国のものですから、どうぞ遠慮なく・・・」
・・・待ってくださいよ。それではお土産の意味がなくなるじゃないですか。
結局僕はお店の人にもあれこれ聞いたあといくつかに絞り込んだのだけど、どうしよう、決め手にかける。・・・ふと思い立って、沢渡くんに電話することにした。
「ねえ、甘いほうがいい?甘さは控えめのほうがいい?」
“・・・殿下はそれだけのために電話してくださったのですか?”
「だって、沢渡くんが買ってきたことにするお土産でしょ?君ならどちらがいいかと思って」
こういうときには聞いてみるのが一番じゃない?そして沢渡くんは半ば呆れながら選択してくれた。よし次は、沢渡くんのためのお土産も買おうと思っているけど、
“僕は殿下のリングがほしいです”
としか言わないから困ったものだ。
「その方は、ピアノをお弾きになるのですか?」
「そうですよ。独創的なのですが、僕はかなり気に入っています」
「我が国にはとてもいいピアノがあるのですが、いかがですか?」
それはまた大きすぎるお土産じゃないですか。・・・でも彼は来年には引っ越すことになるし、だったらグランドピアノを置いてあげたいんだけどね。・・・どんなピアノなのか聴かせていただいてから考えよう。