11/28 (土) 22:30 テニス大会その1

殿下主宰のテニス大会!ということで、部活が終わってから結城の車に乗せてもらった。助手席に僕、後部座席には朝霧と加藤。・・・結城はこういうときには運転したがるんだよね。でも、いくら土曜日で学校が休みとはいえ、こういう目立つ車で来られると困るのだけど・・・と言いながらも、嬉しかったりもして。

着いた先は王宮所有のリゾート施設。すでに何台か車が停まっている。

「どなたがいらっしゃるの?」

「さあな、来てからのお楽しみだとさ」

条件は、例のTシャツを持ってくること・・・朝霧はテニスをしないが、彼も呼ばれていた。

驚いたのは、先日予算案の作成時に一緒に仕事をさせていただいた閣僚がいらっしゃるかと思えば、テレビでよく拝見する芸能人もいらっしゃることだった。・・・完全に読みが甘かった。殿下の交友関係の広さには脱帽だ。しかも堅苦しい雰囲気ではない。

「みなさん、ようこそ」

そこへ殿下が、舞さんを伴って登場した・・・そうか、当然舞さんもだよね。いつの間にか陛下や有紗さんもいらしている。

「まずは夕食の席へどうぞ。そちらで今回のルールについてお話しします」

少しの間にこんな大掛かりな会を開けるなんて、殿下の行動力は素晴らしい。・・・あれよあれよという間に部屋に案内され、夕食の席に戻ってきたけれど、いろんな人と会話をされる姿を拝見すると、僕が知っている殿下ではないような気がして少し寂しい。

「テニス大会という名目になっていますが、実は二部構成になっています。今夜はテーブルテニス大会、そして明日はテニス大会です。チーム分けはこちらでさせていただきました。お渡ししたTシャツが白地のチームと、色地のチームです。ルールは団体戦ですが、卓球のほうは余興ですので成り行きに任せてどうぞ。テニスのほうは、各チームからシングルス3名とダブルス2ペアを選出してください。3本以上取ったチームが勝ちです。ささやかながら賞品も用意させていただきましたので、みなさん、日頃の運動不足を解消なさってください」

そういうことなんだ。そして、白地チームは陛下、色地チームは殿下がキャプテンで、それぞれ食事をしながら作戦を立てることになった。・・・僕たちのチームは全員で20名。殿下のほか、舞さん、身近なメンバーのほかに、有紗さんもいる・・・。

「先に言っておくけど、相手チームにはテニスがうまい人が結構いるから、いくら僕たちが若いからって油断しないようにね。僕がメンバーを選んでもいいんだけど、そこは自由に行こうよ。とりあえず、舞とダブルスに出させてくれれば文句はないから」

・・・殿下は嬉しそうだ。そう、この場は無礼講ということらしい。殿下は簡単にそれぞれを紹介すると、殿下の友人だという芸能人の方や、政治家の方とも、気さくに僕に話しかけてくださった。

卓球大会は、みんなアルコールが入ったこともあり、それはそれは盛り上がった。卓球などほとんどしたことがないのに僕も借り出され、ちょっとムキになってきたら野次が飛んできて笑わされ、一応勝ったものの、運動神経云々ではなく笑いすぎて腹筋が痛くなった試合だった。朝霧も無理やり出されていた。

中には陛下対殿下という試合もあり、殿下が本気で挑んで勝ってしまうという事態も起こった。・・・そう、遊びも本気でやるところが殿下らしい。

そして僕は有紗さんと、自然に見えるように話していた。・・・こんな機会を作ってくださるのも殿下ならでは。

「有紗さん、明日沢渡くんとダブルスの試合に出てくれませんか?」

殿下はみんなの前でおっしゃった。

「沢渡さんがよろしければ」

あ・・・。有紗さんは僕に答えを委ねた。

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