「余計なことを考えていないで、もっと寝ろ」
のわりには結城も楽しんでいたじゃないか。・・・それに、そうやって僕の部屋に居座っているほうが迷惑だと思わないわけ?
「仕方ないでしょ、忙しいときほどそういうことを思いついてしまうんだから」
「だったらついでに、もう少し沢渡に世話を焼いてくれないか?」
何かと思い話を聞いてみると、沢渡くんはしばらく実家に帰ったのだという。
「沢渡にも問題があるけど、祥子さんにも問題があるんじゃないかと思うんだ。沢渡を見る目はちょっと行き過ぎてると思うんだよな。普通っていうのがどういうものなのか分からないけど、そうさせてしまったのは俺たちだろ?もう少しどうにかできないものかと思って」
なるほどね。沢渡くんはあまり実家に帰りたがらない。高校生の男子が家にいついているのもおかしい気がするけど・・・僕が高校生の頃にはすでに母が亡くなっていたから、僕自身もよく分からない。
「でもそれって、いつも一緒にいればそのうち慣れるものじゃないの?」
「そうも思うけど、アイツはもれなく逃げてくる。それに俺も、わざわざナーバスにさせることもないんじゃないかと思ってしまう。・・・すると事態はずっと変わらないままだ」
「で、僕にどうしてほしいの?」
・・・結城は意外そうな目で僕のことを見た。
「それは・・・、何かいい案があれば出してほしいと思っただけで・・・」
気持ちは分かるけど、
「それは、家族で解決していく問題なんじゃないかな?お母さまは時々沢渡くんに会えれば幸せなんだよね?それに沢渡くんも、僕達と宮殿にいて仕事が出来れば幸せなんだよね。お互いが同時に幸せを感じられればそれに越したことはないけど、それぞれ別のところにでも幸せがあるのなら、無理に引き合わせる必要はないと思うんだ」
僕も、父の後妻のことが嫌いなわけではないけれど、あまり積極的に会いたいとは思わない。それに、母が亡くなったことで余計に舞を求めるようになったのも事実なわけで・・・。
「でも僕は祥子さんのことが好きだから、久しぶりに会いに行ってみようかな?」
すると結城は、黙ったまま、ありがとう、と頭を下げた。