11/29 (日) 16:00 テニス大会その2

僕はそんなにテニスが上手なわけではない。しかもダブルスなんて、ほとんどしたことがない。だから、有紗さんとは真剣に打ち合わせをした。・・・何故なら、竹内さん、殿下のご友人、結城が試合をしたのだけど、みんなレベルが高かったのに、1-2で負けている。だから最後に殿下がお出になる前に、スコアを2-2にしておく必要があるのだ。

すると僕たちの相手は両陛下ということになった・・・これは、ヤバイ。

「沢渡くん、手加減は不要だよ。分かったね」

・・・存じている。両陛下はテニスがお上手だ。そのおかげで、学ばせていただいたのだから・・・。

「有紗さん、どうしましょうか」

僕と有紗さんは、コート上でこっそり打ち合わせに励む。

「希は本気でやって。私は上手じゃないから、そのくらいでちょうどいいわ」

有紗さんもそんなことないと思うんだけどな、まあ、やってみるしかないか。

僕は有紗さんの背中越しにボールを追いかけた。・・・試合に集中しなければならない。でも、いいショットが決まったあとには自然とハイタッチをしたりする、笑顔が見られる・・・それがとても嬉しかった。だからもっと頑張ろうと思った。だってここは僕の部屋の外なのに、触れ合うことが出来るなんて、まさに夢のような気分だ。

試合はデュースに次ぐデュースで、辛うじて僕たちが勝った。・・・よほど嬉しかったのか、有紗さんが僕に抱きついてきた。

最終試合、殿下&舞さんペアと長官ペアの闘いは、今までの緊迫したムードから一転、いい意味でほのぼのとしたものになった。・・・僕たちのような敵愾心むき出しの試合ではなく、クールに、そして観る側にも楽しませてくれる試合。またまた殿下からは勉強させていただいてしまった。僕も早く、殿下みたいな大人にならなくては。・・・こういうときにはまだまだ子どもだと思ってしまう。

そして試合途中で、殿下はウェアの上着を脱がれた。・・・殿下のTシャツには、濃い緑地に白字で“王子”と書かれていた。これにもまた拍手喝采。

結果は殿下ペアが僅差で負けた。・・・残念だとは思うけど、殿下は十分やり遂げたと充実した顔をなさっていたし、僕達も楽しませていただいたので、仕方がない、と思った。

そして閉会式。

「みなさん、お疲れさまでした。それではお待ちかねの表彰式を行いますので、勝った選手のみなさんはどうぞ前に進み出てください」

うわ~、緊張の瞬間。有紗さん、そして結城と共に前に行く。・・・が、いただいたものは、・・・ボールペン。

「これは形だけのものです。それ以上にみなさんは栄誉を得たはずですので、十分でしょう」

・・・殿下はどこまでもどこまでもお茶目で、たまりません。

その後、宮殿への帰り道、殿下に伺った。

「それで、こんなにたくさんのTシャツをどうなさったのですか?」

基本的に、無地に文字だけというシンプルなつくりなのには違いがないのだけど、中には文字のデザイン性が高かったり、またその字体も様々だったりした。

「いろんな国で買い集めたんだよ。それを見るたびに誰かの顔が浮かんで、ついつい買いたくなったというわけ」

・・・それはまた気の長い話ですね。

「何でもそうだけど、大事なのは気持ちだよ。見掛けだけにとらわれていてはいけない」

その通りです。それをこの二日間で学ばせていただきました。本当に楽しかったなあ。

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