舞が勤める学校が創立記念日で休みだということで、僕の休みもそれに合わせてもらった。保護者に会うのはマズイという舞の希望で、首都からは少し離れた小都市へ。・・・でも、こんな観光地に来るのは余計にマズイのではないかと思うのだけど、気づかれるのはいつものことだし、何より我が国の文化遺産は何度見ても素晴らしいのでよしとする。
「最近の子どもたちってどう?」
僕たちは手をつないで、ゆっくりと、色づいた木々の間を歩いていく。
「いろんな子たちがいるわよ。でも共通して言えることは、家族全員で過ごす時間が減っているってことかな。例えば、夕食のときに、お父さんは仕事、兄弟は部活や塾で、まだ帰ってきていないとか」
やっぱり自然とそうなるだろうね。
「舞の家はどうだった?」
「私の家もお父さんの帰りが遅かったけれど、その分、一緒にお風呂に入ったりとか、週末のお出かけは頻繁にあったりしたかな?」
・・・お父さんとお風呂って、何歳くらいまで?
「もう、そういうことを聞かないの!・・・小さい頃の話なんだから」
「・・・何年生まで?」
貴くん!と舞は怖い顔で睨みながら、僕の手を振り解いた。・・・冗談だよ。僕も娘と一緒にお風呂に入る日が来るのかな?と思ったら、楽しくなってね。
「やっぱり家族を構成するためには努力が必要なんだろうね。僕たちも気をつけなくちゃ」
そうよね、と、舞は今度は僕の腕に抱きついてきた。・・・僕の場合、子ども以前に、舞を寂しがらせないようにしないと。いくら仕事を優先させたいと言っていても、その分の埋め合わせは必要だ。だったら逆に、早めに子どもを作って一人にしないほうがいいのかな?
「子どもはいつ頃作る?」
「しばらくは二人きりで過ごしたいな。今までこんなにも離れ離れになっていたんだから。でももちろん、貴くんの子どもはほしいわ。・・・そうね、二人くらいは。時期は任せるけどね」
「二人だったら、男の子と女の子がいいな。・・・でも、生意気そうな息子になったらどうしよう」
「大丈夫。貴くんはいいお父さんになるわ。今だって凄く面倒見がいいから」
そうかな?自分の子どもには甘くなるって言うし・・・、でも、一つだけ絶対に気をつけたいことは、寂しくて泣かせたりしないということ。あの宮殿の展望台で見た光景はもうたくさんだ。