どれだけ時間が経ったのか、重いまぶたを持ち上げると、医療部の仕官がベッド脇に座っていた。
「じっとしていてください。熱は大分下がりましたが、まだまだ安静が必要です」
「俺は・・・」
何だ、この声は。単に寝起きだからというわけではなかった。声を出したいのだけど、喉のもやもやがそれを精一杯阻んでいる。
「インフルエンザで、昨日からほとんどずっとお休みになっていらっしゃいました。・・・ご気分はいかがですか?喉がお辛いようなら、首を振ってください」
・・・なんと情けないことだ。仕方ないので、最悪だ、という表情を作っておいた。首を振るにも、頭が痛くて割れそうだったからだ。
参ったな、インフルエンザなんてどこでもらってきたのだろうか。健康管理がまずは大事だ、なんていつも響や沢渡に言っているが、これでは説得力のかけらもない。
こんなとき、いつもの俺なら「今は寝てろ。休むときにしっかり休んでおかないと、余計に長引く」なんて言うんだろうな・・・ああ。
夜になって、
「結城が寝込むなんて、この世の終わりも近いのかな?」
響が笑いながら入ってきた。・・・しっかりマスク着用で。
「うるさいな、近寄らないのが身のためだぞ」
ああ、ひどい声、とますます楽しそうに、枕元に果物籠を置く。
「本当は剥いてあげたいところだけど、代わりに結城の仕事を引き受けてあげるから、早くよくなってね」
・・・絶対、心配しているというよりは楽しんでいる感じがしてたまらない。でも、アイツをこれ以上忙しくさせるなんて、俺は悪い男だ。
「大丈夫かね、結城くん」
あの・・・、陛下まで物珍しそうな目でご覧になるのはやめていただけませんか?
「君が倒れるなんて、よほどのことだね。病気どころか、地震が来ても君だけは生き残りそうなのに・・・」
そんなおっしゃり方がありますか?あんまりですよ。
「たまにはゆっくりしなさい。おやすみ」
はい・・・。ゆっくりせざるを得ませんが、退屈すぎませんか?