12/22 (火) 16:30 彼女のために

「沢渡くんって綺麗に脚が上がるのね。ビックリしちゃった」

僕にとっては、脚を上げる=蹴りを入れるなのだけど、こんなところで役に立ってしまった。

早くも沙紀ちゃんの提案で、いつもの四人で何かを発表することが決まっている。・・・これを断るような僕ではない。むしろ、僕も朝霧もちっとも戦力にはならないと思うので、恐縮しているところだ。・・・僕たち二人では何もできないので、路頭に迷ってしまう、だからその申し出を快く受けた。

「ゴメン、僕には何をどうしたらいいのか、全く分からなくて困っているんだ。どうしよう?」

「まずはテーマを決めるといいと思うわ」

そう口を挟んできたのは村野さん。だったら村野さんも参加すればいいのに。

「いいの、私は。端から見ているほうがアイディアが浮かぶタイプだから。・・・それで、みんな、何か表現したいことはある?・・・例えば、若さ、とか、情熱みたいな、抽象的なもののほうがいいと思うのよね」

そんなことをいきなり言われても・・・、ダンスは観たことがないのでよく分からない。・・・そしてそれはみんなも同じよう。

「だったら、今週何か観に行こうよ。それから考えるっていうのはどう?」

それは願ってもないこと。・・・村野さんは結構ダンスにも詳しいらしい。部長に負けず劣らず視野が広いと言うか何と言うか、来年の部長はぜひ村野さんにお願いしたいところだ。

何て先のことを言っていてもしょうがない。今回は練習期間が短い、しかも、上柳さんとはこれが最後。せめて、いい思い出にしてあげなければならない。

とりあえず部活が終わると、上柳さんはやはりさっさと帰ってしまったので、沙紀ちゃんと話すことにした。

「沢渡くんだけじゃない、私も悪かった。・・・今は仲直りできたけど、自分に彼氏ができたのをいいことにまゆを裏切っちゃったことは、消しようがないから」

・・・そうなんだ。・・・そして、今も彼氏とは順調なんだね。

「でもこんなことになるなんて・・・本当にショックなのよ。・・・だから、できる限りのことはしてあげたいの」

「それは僕も同じだよ。何だってする」

本気なの?と沙紀ちゃんが聞く。・・・もちろんだよ。

「例えば、テーマが恋とかでもいいわけ?」

「いいよ、芸術作品になるんだったら」

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