「沢渡くんって綺麗に脚が上がるのね。ビックリしちゃった」
僕にとっては、脚を上げる=蹴りを入れるなのだけど、こんなところで役に立ってしまった。
早くも沙紀ちゃんの提案で、いつもの四人で何かを発表することが決まっている。・・・これを断るような僕ではない。むしろ、僕も朝霧もちっとも戦力にはならないと思うので、恐縮しているところだ。・・・僕たち二人では何もできないので、路頭に迷ってしまう、だからその申し出を快く受けた。
「ゴメン、僕には何をどうしたらいいのか、全く分からなくて困っているんだ。どうしよう?」
「まずはテーマを決めるといいと思うわ」
そう口を挟んできたのは村野さん。だったら村野さんも参加すればいいのに。
「いいの、私は。端から見ているほうがアイディアが浮かぶタイプだから。・・・それで、みんな、何か表現したいことはある?・・・例えば、若さ、とか、情熱みたいな、抽象的なもののほうがいいと思うのよね」
そんなことをいきなり言われても・・・、ダンスは観たことがないのでよく分からない。・・・そしてそれはみんなも同じよう。
「だったら、今週何か観に行こうよ。それから考えるっていうのはどう?」
それは願ってもないこと。・・・村野さんは結構ダンスにも詳しいらしい。部長に負けず劣らず視野が広いと言うか何と言うか、来年の部長はぜひ村野さんにお願いしたいところだ。
何て先のことを言っていてもしょうがない。今回は練習期間が短い、しかも、上柳さんとはこれが最後。せめて、いい思い出にしてあげなければならない。
とりあえず部活が終わると、上柳さんはやはりさっさと帰ってしまったので、沙紀ちゃんと話すことにした。
「沢渡くんだけじゃない、私も悪かった。・・・今は仲直りできたけど、自分に彼氏ができたのをいいことにまゆを裏切っちゃったことは、消しようがないから」
・・・そうなんだ。・・・そして、今も彼氏とは順調なんだね。
「でもこんなことになるなんて・・・本当にショックなのよ。・・・だから、できる限りのことはしてあげたいの」
「それは僕も同じだよ。何だってする」
本気なの?と沙紀ちゃんが聞く。・・・もちろんだよ。
「例えば、テーマが恋とかでもいいわけ?」
「いいよ、芸術作品になるんだったら」