別々に歩いている男女に、二人の妖精が花びらを振り掛ける。すると二人は振り返り、互いを意識し合う。
しかし最初はぎこちない様子で、彼女は僕におっかなびっくりの態度を見せる。ここは妖精たちも含めてコミカルな振り付け・・・リアクションは大げさに。
やがて僕たちは二人で出かけていく。そこで会話をしたり、何かを見てみたり、踊ってみたり。
しかし妖精たちは戻ってきて、別れの時が来たことを知らせる。・・・そこで二人はお互いの愛を確認する。離れたくないと思う二人。でも次第に魔法が弱まってきて、距離を保ち始める。
・・・そして、最後のダンスをし、二人は別れていく。
「素晴らしかったわ」
部長が言ってくれて、僕たちはお辞儀をする。・・・素直に嬉しくて、僕たちは抱き合った。ダンスという初めてのジャンルで作品を残せたということは、貴重な体験だった。それは上柳さんがいいアイディアを提供してくれたから。
兼古先輩もまた、紳士らしい優雅なダンスを見せてくれた。今回ばかりは、「何でそういうことを言い出すんだよ」と部長に突っかかっていたのだけど、そこはやはり兼古先輩。演劇部の中の精鋭を率いて、カッコよく決めてくれた。
他には、女の子たちのコメディっぽいダンスとか、勇気ある一人でのダンスとか。先日観に行ったときにも思ったのだけど、人間の身体は美しい。しなやかな動きもそうだけど、筋肉のつき方も・・・。でも僕は少し細すぎるから、もっと鍛えたいな。いずれにせよ、全身を使って表現するというのは、見ていても、自分でやっていても、気持ちがいいのだということに気づかされた。その点は、立っているだけでサマになる結城を見習っておかないと・・・。
・・・上柳さんは満足そうな顔をしていた。この間のことがあったから、終わった瞬間に泣かれたらどうしようかと思っていた。・・・でも大丈夫?!・・・いや、さっきから、全然僕と目を合わせようとしない。
「ねえ、沢渡くん」
沙紀ちゃんが隣に来て座る。
「まゆをきっぱり諦めさせて。・・・そうじゃないと、かわいそうだよ」
うん・・・、そのほうがいいのかな、やっぱり。
「それじゃみなさん、今夜の打ち上げでまた会いましょう」
部長が締めくくって、部活は解散となった。