1/9 (土) 16:30 仕事始め

「おお、帰ってきたか」

と、両手を広げて待っていたのは結城だ。何せ結城は休暇の前に、「お前の方からは絶対連絡してくるな」と言った人である。それはつまり仕事のことは忘れてゆっくり休んできなさいというありがたい言葉だったわけだけど、

「これからしっかり働いてもらうからよろしくな」

ほらきた、やっぱり。そんなに嬉しそうに言わないでくれるかな?

でも話によると、僕がいない間に特に変わったことはなく、沢渡くんがしっかり代理を務めてくれたとのこと。それどころか、予算案に関してたくさん質問を受けていたということだから、頼もしい。

「それから、これを見ろよ。いい男っぷりだろう?」

・・・何の話だい?またいきなり。見ると、夕食会に出席したときの沢渡くんの写真。・・・確かに衣装も似合っているし、言うまでもなくいい男。それは分かるけど、そんな顔で写真を見せるなんて、完全に親バカみたいだよ。

「つまり、僕がいないほうが、親子水入らずでいいってわけだ」

「そうだな、お前の父親になる気はないからな」

真顔で言わないでよ、もう。

さすがに一週間も国を空けていたとなると、その間を埋めるのは大変だ。・・・休みボケの上、議会直前ということでいろいろ準備が大変。入れ替わり立ち代わり秘書や仕官がやってきて、報告をしたり、書類を差し出したり。・・・一気に疲れが出てきそうだ。これは最初から分かっていたことなので、仕方がないといえばそうなのだけど。

「失礼いたします。お帰りなさい殿下」

ああ、沢渡くん。・・・ふと思った。また身長が伸びたんじゃないかい?こういうところも、結城に似るのか。

「僕がいない間、立派に務めを果たしてくれたそうで何よりだよ。お疲れさま」

「いえ、本当は内心不安でした。今回はたまたま何事もなくてよかったのですが・・・」

「その辺は経験でカバーするものだよ。今年は沢渡くんにもっと活躍してもらうつもりでいるから、よろしくね」

「こちらこそよろしくお願いいたします。・・・では、この一週間についての報告をさせていただきます」

うん。・・・まとめ方も実に的確で分かりやすい。さすがに今回の議会には出てもらえないが、裏方として頑張ってもらいたい。となると、僕がしっかり彼を育てていかなくては。

そうだね、今年の目標は、沢渡くんをしっかり育てよう!にしよう。

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