1/11 (月) 16:30 始まりの日

今日は始業式、と共に議会の始まり。僕が作成に携わった予算案が通るのかどうか心配だけど、今のところはとにかく学校に行くしかない。

先日殿下の代理を務めさせていただいたときもそうだったけど、とりあえず表舞台に立たないことが陛下の方針だ。・・・夕食会でもすっかり目立ってしまったらしく、僕の元へはひっきりなしに人が訪れた。それでいて素性は明かしていないのだから・・・高校生であることはもちろん内緒、今後は写真もできるだけ撮られないように、と言われてしまった。

・・・でも、興味本位ではなく仕事の話をしに来る人が何人かいたことは、純粋に嬉しかった。あれだけ揉めたのに、今では僕のことを認めてくれているということだ。

3学期が始まったけど、上柳さんはいない。クラスの反応は意外と冷ややかだった。何人かは、

「それって沢渡のせい?」

何て冗談ぽく聞いてきたが、僕が目で釘を差しておくと、あとはみんなヒソヒソ話をするにとどまった。沙紀ちゃんもまた、態度がどこかよそよそしい。・・・そうだ、僕はある程度距離を置いて人と付き合うのがいいみたいだ。そのほうが僕自身も楽だ。

部活もまた今日からスタート。年末年始の間に台本をしっかり読み込んでおいたのだけど、うっかり有紗さんに、見せてしまったのがいけなかった。・・・私が義理のお母さんの役をしてあげる、と張り切ってしまって。でもおかげでリアルな演技を追求できた気がする。

今日のところは本読み。兼古先輩が兄だなんて面白い。・・・けど、もしそれが現実だったら、僕はいじめられそうだ。

「そんなこと言うなよ。沢渡みたいな弟がいたら、とことんまでかわいがってやるよ」

かく言う先輩には弟がいて、逆に僕には兄がいる。・・・本当の兄のほかに、響殿下というまるで兄のような人も。

「僕がいたら、ということは、今はかわいがってあげていないんですか?」

「そんなことはないけど・・・、長男っていうのは結構面倒臭いんだよ。親父は俺の後を継げとか何とかやかましい。それは弟に任せようと思いたいところなんだけど、ウチの弟は少々頼りなくてね・・・」

そうなんだ。言われてみると、弟さんの話は今まで聞いたことがなかった気がする。今はまだ中学生で、あまり目立たないとのこと。だからその分、先輩は兄貴らしく、長男らしく、リーダーシップを発揮するようになったのかもしれない。

僕にとって兄とは・・・、年が離れているせいもあって、絶対に近づけない存在だ。殿下にしてもまたしかり。僕なんかとは比べものにならないくらい高いところにいらっしゃる。・・・兼古先輩もまた、僕にはないものをたくさん持っている、尊敬すべき兄のような人だ。

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