議会の間、逆に私には時間ができる。
私は秘書として常に陛下に同行させていただいているけれど、仕事は主にスケジュール管理。昼間ずっと議場にいらっしゃるということは、それだけ私の仕事が減るということになる。・・・もちろん、他の秘書の方々は、資料や情報を集めるのに必死になられているが、そこに私の出番はない。所詮私は陛下の娘であり、能力を評価されてこの仕事についているわけではないのだから。
でも一人ゆっくりしているわけにはいかず、一応議会の進行具合や陛下の様子はしっかりと確認しておく。今回の議会は今のところ順調なよう。そしてそれもこれも希のおかげ。予算案の作成時には、心配になるほど仕事に身を捧げていた。でもそれが、きちんと報われているのは私も嬉しい。希自身は議会に呼ばれないことに納得がいかないみたいだけど、この間頑張った分のご褒美なのだと思う。・・・でも本当は、身体を壊しかねない情熱の傾けぶりが危険だと判断されたに違いない。
彼はまだ若いから。
その若さが羨ましくなる。
議会は終了。でも誰も私に意見など求めない。陛下は他の秘書と話をなさり、私はただ側を歩くだけ。
この職場には圧倒的に男性が多い。そして誰も私に女性らしさを求めない。ここではただの秘書。なのに、晩餐会などで外賓がいらっしゃるときだけ、私は陛下の娘になりちやほやされるのだから、調子が狂ってしまう。
本当は、私だってもっと愛されたいのに・・・。
部屋に帰ると、ただ静かな部屋が私を待っていた。小さい頃から陛下の娘として見られ、クラスメートとの間には常に隔たりがあった。近づいてくる人はみんな興味本位、親友と呼べる人はいない。・・・どんなに寂しかったことか。でも陛下は私にとても厳しく、家にいても楽しくなかった。・・・母は私たちの板ばさみにあって苦しそうだったから、私は努めて平静を振る舞っていたけど。
だから、希と付き合うようになって初めて、人生に幸せを感じられるようになった。でも私が希に依存しているようには思われたくないから、週に一度しか会わないことにしている。
今までの不運も彼に出逢うための試練だったのかと思えるほど、彼は素敵な人。彼がいてくれれば、日常的にあるどんな辛いことも乗り越えられる。
今の私にはあなたがすべて・・・。