そして初めて、日曜の夜にも会うことになった・・・。
「何故だか分からないんだけど、急に不安を覚えたり、自分の立場が分からなくなったりすることってない?」
私は遠慮なく、持参したお酒をグラスに注ぎながら言った。・・・それでも、お酒の力が足りないと、言えそうになかった。
「僕なんてしょっちゅうですよ。それを考えないようにするためにも、がむしゃらに仕事をしているところがあるかもしれません」
そう・・・。希は今ソファーの背から身体を起こして、私の話を聞く体勢に入ってくれている。組まれた長い足に腕を預けている姿は実に頼もしい・・・けど、希にもそう感じられるのはよくあることなのね。
「そうなってしまった時にはどうするの?」
「ピアノを弾くか、誰かに会いにいくか、寝てしまうか、ですね」
・・・私には、一番最後の選択肢しかない。いえ、選択になっていない。
「私には趣味がないのが、いけないのかしら?」
「そんなことありませんよ」
希は反射的にそう言って・・・から、目を反らした。
「原因は他のところにありそうですよ」
どういうこと?
「解決方法がどうこうじゃありません。有紗さんは自分を抑えすぎなんですよ。・・・そんな時、僕、という選択肢は作ってくれないんですか?」
希・・・。
「僕は有紗さんの恋人のはずなのに、大事なときに呼んでもらえないなんて・・・僕じゃ物足りないということですか?」
「違う、違うのよ」
「どう違うんですか。僕には分かりませんよ」
「ごめんなさい。・・・本当にごめんなさい、素直になれなくて」
希以外の人はいないのに・・・。私のわがままで彼を振り回してしまったら、嫌われるかと思って・・・。その考えは間違っていたみたい。
「どうしたら許してもらえる?」
「・・・僕のことを愛しているという確証がほしいです」
どうしたら分かってもらえるかな?・・・私は希に口づけた。