しかし沢渡は今日も、留守電、留守電、留守電・・・。何をやっているんだか、一体。アイツの俺に対する態度には変わりがないから何も感じなかったけど、クラスメートや同級生に対する態度が違うとなると、それは穏やかではない。やっぱり上柳さんとのことが相当堪えたのかな?
と他の男の心配をしていてもしょうがない。もう入試まで一年を切っている今日この頃、俺の進路はどうなることやら・・・・は、今の成績によると、かなり選択肢が狭められてしまっている。何とかしなければ、とは思うのだけど、ロクに勉強をしないのに学年1位をとっている人間が近くに二人もいるとなると、やるだけ無駄な気がしてくる。
「何言ってるのよ。私だってやるべきときにはちゃんと勉強しているわよ。成績なんてものはどれだけ努力したかってことなのよ」
「沢渡もそうだとは思えない・・・」
アイツは何だってできるんだ。
「そうかもしれないけれど・・・」
ほら、美智もそう思ってるんじゃないか。
「演劇に対しても凄く熱心に取り組んでくれているじゃない。彼もかなりの努力家よ。だから、天才的な頭脳がない私たち凡人は更なる努力をしないとね」
分かってるよ、分かってるけど・・・。
「目標が定まらないと、なかなか集中できないもんじゃないか」
この間聞いてみた。美智は脚本家になるために、芸術大学に進学するとのこと。に対して俺は・・・、とりあえずは大学に行かないと親父が黙ってはいないだろう。でも俺には政治家なんて向いていない。何故なら、現代社会の成績が最悪だからだ・・・政治のことなんてこれっぽっちも分かりはしない。
仕方なく今日は、家の部屋にこもることにした。美智と一緒にいると何かしら口やかましいことを聞かされることになるし、とりあえず試験前なので家庭教師も来る。・・・しかしそれ以外には集中力が続かない。
・・・夕食時、珍しく親父が帰ってきた。それだけで食卓には緊張感が走る。
「今回の議会は順調に進んでくれて助かるよ。それもこれも、王宮の若くて優秀な政官のおかげなんだそうだ。祐輔にもほんの少しでいいから彼みたいな頭脳があればいいのだが・・・」
どういう意味だよ、それは。誰の遺伝子からできているんだよ、俺は。王宮の政官と比べられるなんてたまったものじゃない。俺たちの周りで王宮に入れるくらいの人間となると・・・沢渡ぐらいなものだろう。