よくない方向に。議会にて意見が真っ二つに割れ、解散する可能性が高まってきた。
「結城、沢渡くんを呼んで」
「分かった、授業が終わったらすぐに呼ぶよ」
「そうじゃなくて今すぐ。・・・別に手伝ってもらおうと思っているわけじゃない。この一大事をしっかり見届けてもらおうと思って」
・・・何故か僕は、不意に強くそう思った。議会の解散は、僕が知っているだけでも何回かあったけれど、出来れば避けなければならない。それだけに、この貴重な機会から何かを学び取ってほしいと思った。
「帰ってきたら、僕の元によこして」
「分かった。響、しっかり頼むぞ」
うん。王宮側の被害はできるだけ小さくしておかないと。
議場には、野次や怒号が飛び交っていた。何とか対外的な対応策は固まった、しかしその責任をめぐって、混乱が続いている。・・・もちろん、僕にも責任はある。だけど、今回のことはひとつのきっかけにしか過ぎなかったようだ。だから、矛先は僕個人に向けられているわけではない。
議場の控え室に沢渡くんがやってきた。
「僕のそばにいて見ることに専念して。ちょっとした雑用ならこなしてもいいけど、できるだけ客観的な立場で、人の動きやその成果を観察し、報告してもらいたい。ただし、分かっていると思うけど、マスコミには気をつけること・・・特にカメラには映らないこと、分かったね」
「はい、承知しました」
沢渡くんも硬い表情でうなずいた。・・・こんなに慌しい場所でなら、沢渡くんがいても注目を集めたりしないだろう。そして、竹内や加藤にも沢渡くんの扱いについて伝えておく・・・。
でも次の瞬間には、僕は大波に飲み込まれそうになっていた。次から次へと人が訪れたり、僕のほうが訪ねていったり、議場を出ればマスコミに取り囲まれ、宮殿に帰れば陛下や他の政官たちと会議。自分のことを考える余裕などない。ただただ、やってくる仕事を順番に片づけていくだけ。
「響くん、少し休んできなさい」
はい・・・。今日ばかりは陛下のお言葉をありがたくいただくことにする。