何だか沙紀ちゃんの様子がおかしい・・・と思っていたら、部活のあとに呼ばれた。
「お願い、あまり優しくしないで」
え?それはどういうこと?
「由利くんとケンカしちゃったのよ、沢渡くんのせいで」
「僕のせい?まだ言葉が足りなかった?」
「そうじゃなくて・・・やりすぎだよ。しばらくほっといて」
あ・・・、沙紀ちゃんは涙ながらに帰ってしまった。これはマズイ展開だ。コンクールまであと何日もないのに、どうしよう。
そして部室に戻ると、兼古先輩が苦笑しながら待っていた。
「一緒に帰ろうか」
僕としてはあまり時間がなかったので、お茶だけにしてもらうことにして・・・、でも、そもそも僕はやりすぎたのかな?どうしてもコンクールでいい賞を獲りたくて・・・、そしてそのためには僕たちカップルが嘘臭く見えるのは嫌だと思って・・・。
先輩にこれまでの経緯について語ると、頭を抱え込まれてしまった。
「前の経験が、あんまり活きてないな」
そうですか?明るい感じの沙紀ちゃんに合わせて、僕もテンションをあげて頑張っているつもりなんですけど。
「お前って、自分のことを分かっているんだか、分かっていないんだかどっちだよ。沙紀ちゃんはお前の落差に戸惑っているみたいだ。両極端すぎるよ、もうちょっと普通にできないものか」
どういうのが普通なんですか?前回、上柳さんにいつも以上に優しくしてあげていたらやり過ぎだって言われたから、役と普段のときのメリハリをつけて、これは役の中だけだってことを印象付けようと思ったんですけど、いけませんか?
「何て言うか、お前がやっていることはそれこそドラマみたいだから、周りのみんなが驚いてしまうんだよ。・・・それがあまりにハマりすぎてしまうから、みんな常軌を逸してしまうというか・・・王子様過ぎるんだよ」
そんなことを言われても・・・、僕はこれからどうすればいいんですか。
「今はコンクール前の大事なときだし、舞台の上では必要なことだけど、とりあえず沙紀ちゃんとは二人きりにならないようにしてくれ。沙紀ちゃんにも、俺から話をしてみるよ」
・・・ここで沙紀ちゃんに電話したりなんかしたら余計におかしくなる、というわけですか。