定例夕食会。今日は結城に相談してみよう。
「結城はいつ、入宮することに決めたの?」
「俺はな、あんまり自分の将来について深く考えたことがなかった。とりあえずそれなりにいい学校に行っておけばいいかな?くらいのノリだったよ。学生時代はそれこそラグビーに命を賭けていたからな、それだけだよ」
とりあえず・・・でイストに入れるなら、誰だって入れる、と世間から文句が来そうだ。
「で、気づいたら、みんなちゃっかり就職活動に励んでいたから、出遅れた俺としては、入宮試験を受けてみるのが手っ取り早い手段だったんだよ」
「もともと政治には興味があったの?」
結城は大学で政治を学んでいる。
「俺としては、世の中がどうなっているかってことに興味があったんだよ。だから自然科学とか哲学とかも学んだし、政治だけが特別だというわけではなかった。でもそのうち仕事になりそうだったのはこの道だったんだ。それでまさか子守りをさせられる羽目になるとは、思わなかったけど・・・」
一言余計だって。
「でも、思想を学んでいたことも、僕の指導に役立ったってこと?」
「それはあるな。教育論も学んでいたから、実際に試すいい機会になった。・・・成功したのかどうかは、まだ何とも言えないけどな」
「僕自身の主観的な感想では、もちろん大成功だよ。結城がいなかったら僕の人生はどうなっていたことか。今も、結城の人生経験が豊富だってことを知って、かなり感化されたから」
「ああ、確かに経験は大事だよ。まずは視野を広げることから始めたらどうだ?それによって進学先を決めればいい」
大学に行ったほうがいいということか・・・。それに、今の話でいくと、特に政治にはこだわらなくていいというか、それ以外の分野のほうがいいということのようだ。すると、僕が興味をそそられるのはやっぱり建築かな?
「話は変わるけど、来月響が休暇をとることが本決まりになったら、その間頼んだぞ」
「ああ、ご旅行に行かれるんだよね」
「何だ聞いていたのか。アイツもちょっと休ませないとな、働きすぎだから。それと、もう少ししたら仕事も落ち着くだろうから、できるだけ自宅に帰るように。何だかんだ言って宮殿にいることのほうが多いじゃないか」
「え~、グランドピアノが来るのに?」
「それはそうだけど、これもまた今しか出来ないことじゃないのか?・・・別に無理にとは言わないけど、お前が帰ると祥子さんが喜ぶだろ?」
・・・それはやめて。
「兄貴に進路の相談に乗ってもらうことにする、そのために帰るよ」
最近は、詮索されないのをいいことに宮殿にばかりいるのは確かだ。たまには帰らないとね。