3/26 (土) 19:30 興味

定例夕食会。今日は結城に相談してみよう。

「結城はいつ、入宮することに決めたの?」

「俺はな、あんまり自分の将来について深く考えたことがなかった。とりあえずそれなりにいい学校に行っておけばいいかな?くらいのノリだったよ。学生時代はそれこそラグビーに命を賭けていたからな、それだけだよ」

とりあえず・・・でイストに入れるなら、誰だって入れる、と世間から文句が来そうだ。

「で、気づいたら、みんなちゃっかり就職活動に励んでいたから、出遅れた俺としては、入宮試験を受けてみるのが手っ取り早い手段だったんだよ」
「もともと政治には興味があったの?」

結城は大学で政治を学んでいる。

「俺としては、世の中がどうなっているかってことに興味があったんだよ。だから自然科学とか哲学とかも学んだし、政治だけが特別だというわけではなかった。でもそのうち仕事になりそうだったのはこの道だったんだ。それでまさか子守りをさせられる羽目になるとは、思わなかったけど・・・」

一言余計だって。

「でも、思想を学んでいたことも、僕の指導に役立ったってこと?」

「それはあるな。教育論も学んでいたから、実際に試すいい機会になった。・・・成功したのかどうかは、まだ何とも言えないけどな」

「僕自身の主観的な感想では、もちろん大成功だよ。結城がいなかったら僕の人生はどうなっていたことか。今も、結城の人生経験が豊富だってことを知って、かなり感化されたから」

「ああ、確かに経験は大事だよ。まずは視野を広げることから始めたらどうだ?それによって進学先を決めればいい」

大学に行ったほうがいいということか・・・。それに、今の話でいくと、特に政治にはこだわらなくていいというか、それ以外の分野のほうがいいということのようだ。すると、僕が興味をそそられるのはやっぱり建築かな?

「話は変わるけど、来月響が休暇をとることが本決まりになったら、その間頼んだぞ」

「ああ、ご旅行に行かれるんだよね」

「何だ聞いていたのか。アイツもちょっと休ませないとな、働きすぎだから。それと、もう少ししたら仕事も落ち着くだろうから、できるだけ自宅に帰るように。何だかんだ言って宮殿にいることのほうが多いじゃないか」

「え~、グランドピアノが来るのに?」

「それはそうだけど、これもまた今しか出来ないことじゃないのか?・・・別に無理にとは言わないけど、お前が帰ると祥子さんが喜ぶだろ?」

・・・それはやめて。

「兄貴に進路の相談に乗ってもらうことにする、そのために帰るよ」

最近は、詮索されないのをいいことに宮殿にばかりいるのは確かだ。たまには帰らないとね。

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