3/27 (日) 23:00 お披露目

いよいよグランドピアノが届いたので、新しい部屋に設置してもらった。僕のように趣味で弾いている者にはもったいないほどの一品で、まるで部屋ほうが、ピアノのためにあるような気さえしてしまう。

「早速何か弾いてくれよ」

ソファーに腰掛けた結城が言う。

「え~、でも殿下にいただいたピアノだから、殿下にまず聴いていただきたいな」

「でもお前、いきなり弾いて失敗したらどうする?感触は確かめておいたほうがいいぞ」

そういうこと言うかな?普通。

「だったら一人で練習するから、しばらく外に出てて」

「そんなにつれないことを言うなよ。響の許可があれば気が済むのか?」

「出してくださったらね」

はたして、殿下はやはり一番乗りは譲れないとおっしゃったので、夜まで待つことになった。・・・その間に引越しを進めることにする。

今回の僕の部屋は、部屋に入るとグランドピアノがまず目に飛び込んでくる作りになっている。そしてL字型に左のほうにリビングが広がり、ソファーセットと勉強のスペース。その奥はベッドルーム。その隣はトレーニングルーム・・・宮殿の造形美の向こうに海が見える。その隣はバス、トイレ。それから簡易キッチン。全体的にグレーを基調としたカーペット張りの部屋にして、間接照明を使い落ち着いた雰囲気を演出してもらった。

「まるで、モデルルームみたいだね」

殿下は楽しそうに部屋をご覧になり、ソファーに戻っていらした。そして朝霧も。

「殿下、こんなに素敵なものをくださってありがとうございました。これからはもっとピアノに情熱を傾けたいと思います」

「ううん、音色を聴いてみないことには、素敵なものかどうか分からないよ。じゃあ、よろしく」

ふう。何を弾こうかと考えたのだけど、折角部屋が広くなったことだし、ダイナミックな曲を演奏してみたくなった。

うわっ、何これ。気持ちいい。まずは弾き心地がいいし、何よりも音色が僕好みだ。僕を鼓舞してくれるような、弾いていると思わず笑みがこぼれるようなメリハリのある音。

続いて今度は、打って変わってバラードを弾いてみる。穏やかでゆったりした音色に、うっとりとしてしまいそうになる。演奏会なのに、自分が一番楽しんでいるような気がする。

「ありがとう。凄く良かった。これから足繁く通わせてもらうことにするよ。・・・でも、ヴァイオリンとの相性も知りたいな~」

それは僕もです。そして朝霧と一緒に演奏する。・・・引越しはまだ終わっていないけれど、今日からはこの部屋で暮らすことにしよう。

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