4/2 (土) 23:00 歓迎会

両陛下との食事は、滞りなく進んだ。最初はかなり緊張していたようだが、陛下が気を遣っていろいろなことを話してくださったおかげで、表情はかなり和らいでいた。でも、食事はあまり進んでいなかった・・・。

よって、二次会の始まり。引っ越したばかりの沢渡くんの部屋に結城や朝霧くんも集まって、気さくな場を設けることにした。

「殿下、舞さん、この度はおめでとうございます」

沢渡くんが、花束を用意してくれていたのだけど、

「まだ結婚が決まったわけでも何でもないから、受け取れないよ」

「響、沢渡を困らせるんじゃない!」

「では、このお花は舞さんに。陛下とのお食事、お疲れさまでした」

「ありがとうございます」

・・・舞は嬉しそうだ。以前から沢渡くんのことを気に入っていたからね。

「舞さん、響は本当に困ったヤツだから、何かあったらいつでも俺たちに相談してください」

「ありがとうございます」

「いやいや、結城には気をつけたほうがいい。この中では朝霧くんが一番素直でいい人だから、彼に相談するといいよ」

え~!と朝霧くんは目をぱちくりさせている。

「いえ、僕はヴァイオリンを弾くしか能がなくて・・・」

「朝霧さんはヴァイオリンをお弾きになるんですか?」

「はい。・・・王宮の楽士ですから」

「では、ピアノは沢渡さんが?」

「はい。と言っても僕のは趣味程度ですが、殿下からこんなに素敵なピアノをいただいてしまいました。歓迎のしるしに、よろしければ一曲聴いていただけませんか?」

喜んで、と彼女が言って、沢渡くんと朝霧くんが春らしいソナタを演奏してくれた。・・・このピアノは沢渡くんにプレゼントして本当によかったと思う。いくつか見せていただいたのだけど、このピアノを見たときに、何故か沢渡くんが弾いているところが自然と想像できた。そしてそれは、音色を聴いたとき、より確かになった。・・・このピアノがあれば、僕と舞はいつでも心を落ち着かせることができるね。

「素敵だわ、本当にありがとうございます」

舞は目まで潤ませている。・・・そうだよね、緊張の日が続いたからね。今夜は一緒にいてあげよう。

新年度が始まっている。この年は僕たちにとって大きな意味を持つ一年になるだろう。彼女と共に、しっかりと前を向いて歩いていきたいと思う。

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