4/3 (日) 23:30 ペースに流されて

昨夜、有紗さんは殿下の爆弾発言について何もおっしゃらなかった。僕たちの仲は相変わらず秘密のままで・・・、思えば、付き合い始めてからもうすぐ一年になるのに、何も変わっていない。でもそれもこれも、僕が半人前だからなのだろう。まだ高校生というのにも問題がある。これから数日、殿下の代理を務めさせていただくので、その間に少しでも認めていただけるように頑張らないと。

と、広くなったバスタブで考えていたら、ドアがノックされるのが聞こえた。

「沢渡、長すぎないか?茹だってしまうぞ」

結城!どうしてここに?しかも、しばらくいたということ?・・・音楽を聴いていたせいで、来客のアナウンスが聞こえなかったようだ。

「僕の時間なんだから、どう過ごそうと自由でしょ?・・・ところで、何の用?」

「いや、・・・ちょっと話があって。・・・それで、あとどのくらい時間がかかる?もうすぐならこのまま待っているし、まだかかりそうなら・・・、俺も入っていいか?」

それはやめてくれ!いくら広くなったとはいえ、大の男が二人で入る場所じゃない。それに結城は圧倒的にシャワー派じゃないか。・・・つまりは早く上がって来い、ということだね。

「分かったよ、もう少し待ってて。リビングで」

しょうがないなあ。本当はもう少しゆっくりしたかったんだけど。

「どうしたの?僕の部屋にまで来るなんて」

「イイ男になったな、お前は。どんな化粧品を使っているんだ?」

あのね、急用なんじゃなかったの?そんなことを言っている場合?

「まあ、そう睨むなって。かと言って、いきなり本題に入ってもそれはそれで怒るんだろうが、・・・有紗さんと何か話したのか?」

あ・・・、結城にはいつも先手を打たれる。僕の心なんてお見通しなんだね。

「もしかして、陛下が何かおっしゃったとか?」

「いや、そういうわけではないけど、どうしたかな?と思って」

・・・有紗さんが僕の部屋に通っていることなんて、少し調べればすぐ分かることだ。ここで結城がわざわざ言ってくるということは、陛下も気づいていらっしゃるということなのだろうか。

「敢えて何もおっしゃらなかったということは、僕がその程度の人間ということなのかな?」

「それは俺に聞くなよ。・・・でも響にしたって、単なる嫌がらせをしたわけじゃないと思うぞ。お前たちを不憫に思ったんじゃないか?ただ、重責を負っている今言わなくてもいいのにな。・・・沢渡がこんなに困っている、かわいそうに」

結城がそっと僕の肩を抱き寄せ、バスタオルで髪を拭く。・・・いや、されるがままになっている場合じゃない。どさくさに紛れてこんなことをする結城の手をしっかり払いのけなくては!そして、今後の対応についても考えなくては!

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