4/8 (金) 23:30 緊張の糸

そうか・・・。朝霧のことは心配だけど、今は自分のことで精一杯だし・・・、兼古先輩との約束もまだ果たせていないし・・・。そう、兼古先輩は生徒会長ということでとても忙しいらしい。部活にも途中から参加したり、途中で抜けたり。どうせ兼古先輩がいないことには演技シーンの練習が出来ないので、便乗して休もうかとも思ったのだけど、結城がそれを許さない。・・・必要な時は呼ぶから、と。

それにしても、このところ寝ていない。仕事のための勉強に忙しいというのもあるのだけど、常に緊張しているから、神経が昂ってしまって全然眠れないのだ。

「お前張り切りすぎだぞ。もっとリラックスしろよ」

ふとした時に、結城は僕の前に立ちはだかり、じっと眼を見据えた。

「そんなことないよ。別に僕は普通だよ」

「今更、俺の目を誤魔化せるなんて思ってくれるな。全く進歩のないヤツだな」

・・・どうしてそこまで言われなきゃいけないんだ。

「違うって、お前のことを心配して言ってるんだろうが。体調管理は何よりも重要だ。お前に倒れられたら俺が困る」

「・・・でも全然眠くないんだよ。だから大丈夫だって」

「でもいくら若いからといって、睡眠は必要だ。・・・何より俺には、疲れているように見える」

・・・そこまで言われてしまうと、立つ瀬がない。

「じゃあ・・・、どうしたら眠れる?」

「そういうことなら、俺が寝かせてやろうか?」

「いえ、結構です。加藤に頼みます!」

聞いた僕がバカだったよ。・・・いや、結城に面と向かってそんなことを聞いてしまうなんて、それはやっぱり疲れているということになるのだろうか。

部屋に帰ると、加藤はまず風呂に入るようにと言った。・・・いつもとは違う香り。湯船には何かの葉っぱが浮いている。そしてお風呂から上がるとハーブティーが渡され、仲野さんが髪を乾かしてくれた。それから加藤は僕をベッドに寝かせ、マッサージをし始めた。

「・・・まだ寝るには早くない?」

「何をおっしゃっているのですか。これまでに不足した分を考えると、遅いくらいですよ。今後は、ためらわずに沢渡さんの健康管理に手を出させていただきます」

・・・ああ、気持ちいい。さっきまでの頭の冴え具合が嘘のように、辺りがぼんやりしてきた。こんなに早く?

「何か飲ませた?」

「沢渡さんのためですから」

・・・フェードアウト。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です