4/27 (水) 13:00 打ち合わせ

今日からは撮影。その前に、沢渡くんと昼食をとりながら打ち合わせをすることになった。実は沢渡くんは「僕なんかが指導してもいいのかな?」と心配をしていた。確かにまだ経験は一年しかないかもしれないけれど、今や兼古先輩と肩を並べる役者になっているし、何かと目が肥えているので全然問題ない。でもいつまでも謙虚なところは沢渡くんらしくていい。

「僕が演じて見せる必要はなかったかもしれないよね。村野さんなんて、言葉だけでしっかり指導出来ていたわけだから」

「ううん。教わる側としてはそのほうが分かり易いと思うわよ。川端さんに関してはまだまだ心配だもん。でもオーディションのときみたいな緊張感に包まれると、逆に役に入っていきやすくなるタイプかもしれないのよね」

何故かは分からないけれど、うまくやってくれそうな気がする。

「ただ、石井くんとの相性はどうなのかな?って。相手が沢渡くんだったら、何も心配しないんだけど」

「何言ってるんだよ。僕がやったら逆にダメになるに決まっている」

え?やけにはっきり言い切るね。

「どうして?」

聞くと、今度は沢渡くんのほうが不思議そうな顔をする。

「恋愛モノはやらないほうがいい、っていうのは暗黙の了解でしょ?」

「そうだけど、彼女は何だか特別な気がして」

すると、今度は諦めたように大きく息を吐いた。

「オーディションでのことを言っているなら、それまでの子たちよりも演技が上手だったから、ただそれだけのことだよ。演技が上手な人と共演させてもらえると身体が呼応する、兼古先輩との時もそうでしょ?」

まあ確かに。つくづく沢渡くんは、上柳さんに加えて沙紀ちゃんとのことで懲りたと見える。イイ男というのも困ったものよね。

「話を戻すけど、石井には川端さんと話すように言っておいたから。それとは別に、僕たちの指導法はこのままでいいのかな?撮影の日程はかなりきつくなっているから、現場の責任者を決めたほうがいいと思うんだ。それはもちろん・・・、村野さん、やってくれるよね」

ちょっと待って。決定事項なわけ?

「僕も賛成」

・・・朝霧くんってば、今の今まで口を開かなかったくせに、こういう時だけ参加?!

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