遠足の行き先は沢渡くんたちとは違うところ。何やら今回は沢渡くんが行きたいと書いたところに参加者が偏ってしまったらしく、私たちのコースは人がまばらになっている。・・・その方が楽でいいのだけど。
私は沙紀ちゃんと一緒に、湖を見ながらお昼ご飯を食べていた。沙紀ちゃんも沢渡くんたちの周りの喧騒から逃れたかったみたい。
「まゆからメールが来たのよ」
ホントに?そして携帯を見せてもらうと、言葉の壁があるけれど友達も何人か出来てうまくやっている、と書かれていた。・・・そうなんだ、よかったね。
「まゆは凄いよ。何もかも捨てて1から新しい人生を歩き始めたんだもん。私にもそれだけの思い切りのよさがあれば、毎日の生活が変わっていくんだろうけど・・・」
沙紀ちゃんは今シングル。その意味では沙紀ちゃんも新しい人生を歩み始めているんだと思う。・・・私なんて、浮いた話は一切ないんだから。羨ましいよ。
「沙紀ちゃんはどんな高校生活を送りたいの?」
沙紀ちゃんはう~ん、と考える。
「平凡な毎日でいいよ。クリウスはしがらみが多すぎると思わない?みんな穏やかな顔をしているけど、水面下での権力争いが激しくてたまらないよ。私だって沢渡くんたちともっと一緒にいたいと思うけど、現状としてはそういうわけにはいかないじゃない。外野がうるさすぎるのよ。沢渡くんってとてもいい人なのに、そのせいで私たちともギクシャクしてしまうのは残念だよね」
ホントにここ最近おかしいと思う。2年の女の子たちが、1年生を近づけないようにしようと必死になっているみたい。それと共に同級生の特権を活かして、「沢くん」なんて呼ぶようになっている。・・・何をそんなに警戒しているんだか。そんなことをしても沢渡くんが喜ぶわけないのに。
「村野さんもマークされているみたいで危ないわよ。今は近づかないほうがいい」
「でも、部活のことで相談したいこともあるし・・・」
「気持ちは分かるけど、部活のときまで待つか、メールや電話でやりとりしたほうがいいよ」
・・・でも、それだと何だかその勢力に屈したみたいで嫌なのよね。こんなバカバカしいことを今すぐにでもやめさせたいのに。