撮影は無事に終了しているので、今日は編集作業。よって部活は自由参加になっているのだけど、部員の半数はやって来て発声練習などをしていた。その中で沢渡くんは私の編集作業を手伝ってくれていたのだけど、・・・いつの間にか部室に残っているのは私たち二人だけになってしまっていた。
「このシーンなかなかいいよね。このカットとこのカットを使おうか」
「いいね。・・・うん、そこそこ、そこで切って」
うん、ここだよね、と沢渡くんは鮮やかな手つきでマウスを操り、次々と映像を編集していく。沢渡くんの感性と私の感性はわりと近いところにあるらしく、ほとんど揉めることなく、順調に作業が進んでいる。ただ、量が膨大だから大変。
「よし、これで後はDVDに焼けばOK」
DVDを挿入してクリックすると、沢渡くんは椅子にどっともたれかかって脚を組んだ・・・沢渡くんがだるぅ~っとしているところなんて初めて見た。
「沢渡くんのおかげで助かったわ。私だけだったら、どれだけ時間がかかっていたことか」
「遠慮なく言ってよ。僕だって、部員として次期部長には積極的に協力するつもりだから」
次期部長だなんて・・・。
「え?だって他に誰がいる?」
そう真顔で言われても。・・・そのうちDVDが焼き上がって、作業は終了した。
「お疲れさま。後片付けは私がやっておくからいいわ」
「何言ってるの、一緒にやれば早く済むから。それより、こんな時間になってしまったから、一緒にご飯を食べない?」
あ・・・うん。こんな申し出を断るわけない。
「実は村野さんのことが気になってて。・・・何か悪いこととかされてない?もう、昨日の遠足も何だか居心地が悪くてしょうがなかったよ。何でそんなことするんだろうね」
学食でご飯を食べながら、沢渡くんは静かながらも怒りをあらわにした。
「僕としては、折角出来た友達とは仲良くしたいんだよ。逆に言うと、面倒な連中とは関わりたくない。でもこれ以上放っておくわけにもいかないよね。こういうとき、ビシッとしつけても大丈夫なのかな?ただそうすると、思い上がっている人に見えたりしないかな?ほら、直接何かをされているわけじゃなくて、強いて言えば何もされていないわけだから」
なるほど、沢渡くんはそこを心配していたわけね。でしゃばり過ぎていないか、と。でも今の状況は誰の目にも明らかだと思う。みんな沢渡くんのことが好きな故に、牽制し合っている。
「私が囮になってもいいよ」