5/25 (水) 22:00 決心

落ち着いているつもりだったけど、それは上辺だけだったのかな?日が経つにつれて社会復帰できないことに焦りを感じるようになっていたのは事実だし・・・何もしないのがいけないのだ、と思って、部活のためだけでも学校に行かせてくれるようにと結城に頼んでみた。そしてピアノの練習と体力づくりにも精を出している。

「みんなにメールの返事を出さないのかい?」

ピアノの練習に付き合うために部屋に来てくれた朝霧は、学校の様子も教えてくれるのだけど、知らないままでいたいという気がしないでもない。

「だって、またすぐに目が見えるのであれば、何も知らせないほうが心配をかけなくていいかと思って。でもこの様子で行くとまだしばらくかかりそうだから、もうこのまま学校に行ってしまおうと思う」

「いいの?」

「しょうがないよ、これが事実なんだし。でも授業はやっぱり無理だよね」

中間テストの結果が張り出されたというのは聞いた。でも僕は特殊な状況だったせいか、順位に入れてもらえなかったらしい。現に、先生方には僕の状態がどうであるかは知らせてあるらしいが、今後の対応についてはまだ検討中とのこと。

「何もかもが結果待ちの状態で、こんな宙ぶらりんなのにもそろそろ疲れてきたんだよ。部活はどう?」

「今のところ順調だけど、今回はやっぱり沢渡がいないことには練習にならないからね。兼古先輩も物足りないという感じで、今は舞台セットとか小道具の作成に精を出しているところ。部長は、実際に目が見えなくなるとどんな感じなのか聞きたがっていたけど、聞いてもいいのかな、と躊躇っていたよ。あと川端さんも、どう練習したらいいか分からなくて困っているみたい」

終わりのところは若干声のトーンが下がった。・・・やっぱりまだ気にしているんだね。でも僕の妹役というのは大事だし、先輩として教えてあげられることは十分に教えてあげなければいけないと思うし、

「明日は部活に行くよ。絶対行かせてもらう。だから朝霧、フォローをよろしく」

「でも、本当にいいの?・・・みんないろんな噂をしているよ。部室に行くまでには他の生徒にも会うだろうし」

「大丈夫だって。傍目からは目が見えないことは分からないし、僕のほうも余計なことに気づかずに済むし、ごく普通にしていてくれればいいから」

僕は朝霧のほうを見る。

「凄い、目線がちゃんと合ってるよ。確かに、目が見えないとは思えないね」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です