舞のご両親と一緒に夕食をとった後、僕たちは夜の街を歩いていた。・・・少し酔いも醒ましたくて。
「高校を卒業してから随分経ったよね。・・・どう?長かった?」
「そんなことない、あっという間だったわ。大学生の時は結婚のことなんて全く考えられなかったし、就職したら新しい環境に慣れるので精一杯で、でも少し慣れてきたと思ったら更なる仕事が上から渡されて、バタバタしているうちにこの春を迎えてしまったという感じよ。でも私としてはできる限りのことはしたつもりだから、悔いはないわ」
よかった。僕としても、たまたま今年は都合がよかったのだから、自然な形で結婚することになったのは運命的なものかもしれないと思う。
「でも、結婚したところで僕たちの生活はさほど変わらないような気がしない?もちろん、一緒に公務をしたりすることも出てくるわけだけど、それ以外では・・・すでになじんでるよね」
これまであまり会えないまま付き合ってきた僕たちが普通に同棲しているのだ。しかも何の揉め事も違和感もなく。・・・不思議じゃないか?
「それは仕官の方々のおかげでしょ?初めは生活を覗かれているみたいでどうかな?と思っていたんだけど、凄く気を利かせてくださるから、私も自分のことに集中することができてる。申し訳ないくらいよね・・・」
ねえ、僕に対しての意見はないわけ?
「貴くんが殿下でいられるのは、竹内さんを始め、みなさんのおかげなんだってことがよく分かったわ。だから私は、貴くんのいいところばかり見ていられる・・・」
どういう意味?それは!
「でも逆に、貴くんが周りの方にとても気を遣っていることもよく分かったわ。統率力を発揮しつつ、いい雰囲気作りにも努めているみたいだし・・・。ただ、私に対してはあんまり気を遣っていないんじゃない?私の存在にすら気づいていないときもあるみたいだし」
え・・・、いや・・・、それは・・・、あの・・・。
「舞といると居心地がいいというか、妙に安心してしまうところがあるというか・・・」
「いいわよ、別に。貴くんにだって息抜きは必要でしょ?」
「ありがとう・・・舞。でもあまり息抜きばかりしていると気が抜けて仕事に身が入らなくなりそうだから、舞にもちゃんと気を遣うようにするよ」
相変わらずかわいくない・・・と彼女からは苦情が出たが、それは冗談。最近はあまり薬に頼らなくても眠れるようになってきたから、感謝しているんだよ。