6/10 (金) 7:30 弱み

「普通そんな、会見の途中で改心したりする?」

打って変わって朝食の最中、舞はいつものように「意見」してきた。

「だから悪かったって言ってるじゃないか。このところ考えなければならないことが多すぎて・・・、でも一番大切なことを考えていなかったみたいなんだよ。それに気づいたのがたまたま会見の最中だったというだけで・・・、結婚前に気づけたわけだからよかったと思ってよ」

「もう、そういう問題?これでまた一つ考えなきゃいけないことが増えた、なんて思ってない?」

・・・思ってないよ。まったく、会見の時はどうかしていた。それもこれも、普段はのらりくらりとプライベートなことはかわしていたから、いざ自分のことをオープンに話していいという場に出ても、どうしたらいいか分からなくなってしまったのだ。そうやって舞のことに向き合っていなかったことには大いに反省する。

「君だけにはきちんと思いを伝えるようにするよ。愛しているから」

一瞬周りの空気が止まった気がした。・・・ふと斜め上を見上げると、竹内がスケジュール帳を広げて立ち尽くしていた。気のせいではなかったんだね。

「あの・・・殿下、今日のスケジュールを申し上げてもよろしいでしょうか」

「もちろん、どうぞ」

そしてまた、あちこちの人の気配が動き始めた。

昨日は号外が出たほか、夕方のニュース以降ずっと僕たちのことを報道している。とはいえ、今日は普通に公務や会議があり、また舞にもお妃教育の続きが待っている。

「大丈夫、仕事には持ち込まないから」

「それは当然ですが、今日くらいはお祝いの言葉を受け止めてくださいますようお願いします」

「でも僕はあまりプライベートなことを聞かれるのは好きではないんだよね」

・・・って、そんなに怖い顔をしないでよ。分かっている、国家を挙げての一大行事であることくらいは。

「じゃあ、私が代わりに言ってもいい?部屋を片付けることにはあまり興味がないみたい、とか、竹内さんがいらっしゃらないといつも忘れ物をする、とか」

コラコラコラ!身内が暴露してどうする!そもそも、僕は外交問題をうまく対処するためにいるわけで、プライベートはあまり仕事には関係ないと思うのだけど・・・。

「でもこのところ、少し眠れるようになってきたんだ。実際、薬も少し減らしている。・・・夜出歩いたりしていないよね?」

「ええ。時々は貴くんの寝顔を見られるようになったわ。ただ、寝相があまりよろしくなくて・・・」

まだ駄目か。結局弱みを握られているのは僕のほうなんだよね。

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