6/13 (月) 18:30 困り事

クリウスの周辺は相変わらず賑やかだけど、演劇部は間近に迫った地区予選に向けて集中力を高めている。・・・特に沢渡は全力を注ぎ込んでくれているみたいだから、邪魔しないようにしないと。

やっぱり、学校を休んでいる間に沢渡は少し変わったと思う。初日は玄関で彼が来るのを待っていた。そのときから眼光が鋭くなっていたことに気づいていたが、他の生徒からいろいろと声をかけられたときあっさりを受け流すようになったことからも、強さが感じられた。一つ苦難を乗り越えて成長した姿をそこに見た気がした。

でもそれ以降の評判は、実はあまりよろしくない。笑ったりジョークを言うこともあるのだけど、どうでもいいことを言ってくる相手には、冷たすぎると言わざるを得ない態度を取るのだ。まあ以前からそんなところはあったが、輪をかけてと言った感じ。今日の部活もひたすら真面目に取り組んでいったものだから、こっちが息苦しくなってしまった。

「どうする?沢渡のこと・・・」

美智は合宿の時にあれこれ話したそうだけど、同様に困ってしまったらしい。

「でも、今の私たちには、地区予選で優勝することが一番大事じゃない?そのことに関しては全然悪くないわよ。彼の熱意が他の部員にも伝わるし、また自分のせいでみんなに迷惑をかけてしまったことを気にしてくれているし」

そうなんだけど、俺としてはやりにくいな。

「まあね、一人で気負いすぎているところがあるけど・・・、仕事は大丈夫なのかしら?あの様子をどこまで引っ張っているのか、気にならない?もしかしたら原因は他にあるのかもしれないわよ」

「他のことでストレスがたまって、俺たちがそのとばっちりを受けているってことか?」

それは言い過ぎよ、と美智にたしなめられたが、それは俺も気になっている。ただ、殿下との昼食会の時はとてもにこやかな表情をしていたし、仕事のことは関係なさそうな気がする。

「ここは深雪ちゃんに話してみるとか?」

それはいいかも。深雪ちゃんに対しては優しく、そして頼もしく接している。ここはさりげなく深雪ちゃんから沢渡に話してもらうか、気を逸らしてくれるようにいろいろ相談に乗ってもらうとかしたほうが良さそうだ。

「じゃあ、私は深雪ちゃんと話してみるわ。だから祐輔は加藤先生と話をしてみて」

沢渡が休んでいた間、加藤さんとは時々連絡を取っていたので、話はしやすくなった。

「分かった」

朝霧はまだヴァイオリンのことで大変みたいだから、加藤さんに頼ってみるのは名案だと思う。

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