学校に行くと、若菜、香織始め、クラスの女の子たちが一斉に私のところにやってきた。
「見違えちゃったよ。普段はとってもおとなしいのに、あんなに凄い演技をするんだもん、感動しちゃった」
あ・・・、地区予選のこと。
「違うよ。あれは沢渡先輩が凄い演技をしたからで、私なんてただのおまけ」
「そんなことないよ。本当の兄妹みたいに見えたもん」
・・・そのセリフ、殿下にもおっしゃっていただいた。・・・今話題の殿下が、私だけのためにそんなことをおっしゃって、しかも握手までしてくださるなんて感激。
「ねえねえ、沢渡先輩とはお近づきになったの?」
「役作りのためにいろいろと話をさせていただいたけど、ほら、先輩も大変だったからなかなかね・・・」
「電話番号とか知ってるの?」
「何回かかけてきてくださったから」
ウソー、凄い、ずるい。殿下とも握手してたし、うらやましい~。いろんな言葉が耳に飛び込んできて、私は思わず後ずさりをしてしまった。今までこんな風に輪の中心にいたことなんてなかったから。でも結局は沢渡先輩とか殿下の話題になっているから、私はどうでもいいってことなのよね。
と思っていたけど、昼休み、私たちが学食に行くと、2年の先輩方に行く手を阻まれてしまった。
「あなた、1年のくせに度が過ぎてない?胸に手を当てて、自分の行動をもう一度振り返ってみなさいよ。沢渡くんに対しては一歩退くのがクリウスのルールなの。しかもあなたは1年生でしょ?もっと謙虚になったほうがいいんじゃない?」
え~、そんなこと言われても、役作りのためには仕方なかったことで・・・。
「身の程をわきまえないと、あなたの居場所がなくなるわよ。・・・これは親切心から言ってるの、何せ退学にまで追い込まれた子がいたくらいだからね、気をつけたほうがいいわ」
退学に追い込まれたって・・・、何となく噂では聞いたことがあるけど、別に私は単に憧れの人として先輩を見ているだけで・・・。
「深雪ちゃん!」
そのとき、学食の中にいた村野先輩が、私たちの元に駆け寄ってきてくれた。
「あなたたち、後輩をいじめてどうするのよ。彼女はウチの部の貴重な戦力なの。手を出したら承知しないわよ!」
「別に。ただお話ししてただけじゃない。何か勘違いしてない?」
行こう、とその人たちは去っていった。怖い。