6/20 (月) 13:30 一転

学校に行くと、若菜、香織始め、クラスの女の子たちが一斉に私のところにやってきた。

「見違えちゃったよ。普段はとってもおとなしいのに、あんなに凄い演技をするんだもん、感動しちゃった」

あ・・・、地区予選のこと。

「違うよ。あれは沢渡先輩が凄い演技をしたからで、私なんてただのおまけ」

「そんなことないよ。本当の兄妹みたいに見えたもん」

・・・そのセリフ、殿下にもおっしゃっていただいた。・・・今話題の殿下が、私だけのためにそんなことをおっしゃって、しかも握手までしてくださるなんて感激。

「ねえねえ、沢渡先輩とはお近づきになったの?」

「役作りのためにいろいろと話をさせていただいたけど、ほら、先輩も大変だったからなかなかね・・・」

「電話番号とか知ってるの?」

「何回かかけてきてくださったから」

ウソー、凄い、ずるい。殿下とも握手してたし、うらやましい~。いろんな言葉が耳に飛び込んできて、私は思わず後ずさりをしてしまった。今までこんな風に輪の中心にいたことなんてなかったから。でも結局は沢渡先輩とか殿下の話題になっているから、私はどうでもいいってことなのよね。

と思っていたけど、昼休み、私たちが学食に行くと、2年の先輩方に行く手を阻まれてしまった。

「あなた、1年のくせに度が過ぎてない?胸に手を当てて、自分の行動をもう一度振り返ってみなさいよ。沢渡くんに対しては一歩退くのがクリウスのルールなの。しかもあなたは1年生でしょ?もっと謙虚になったほうがいいんじゃない?」

え~、そんなこと言われても、役作りのためには仕方なかったことで・・・。

「身の程をわきまえないと、あなたの居場所がなくなるわよ。・・・これは親切心から言ってるの、何せ退学にまで追い込まれた子がいたくらいだからね、気をつけたほうがいいわ」

退学に追い込まれたって・・・、何となく噂では聞いたことがあるけど、別に私は単に憧れの人として先輩を見ているだけで・・・。

「深雪ちゃん!」

そのとき、学食の中にいた村野先輩が、私たちの元に駆け寄ってきてくれた。

「あなたたち、後輩をいじめてどうするのよ。彼女はウチの部の貴重な戦力なの。手を出したら承知しないわよ!」

「別に。ただお話ししてただけじゃない。何か勘違いしてない?」

行こう、とその人たちは去っていった。怖い。

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