やっと、深雪が僕のものになってくれた気がする。
前の恋愛で学んだことをそのまま彼女に与えてしまったことには、大いに反省した。でも昨日まではそのことにすら気づかない始末で、ただただ好きだという気持ちが、先走っていたようだった。
・・・こんなに誰かのことを好きになったことは、今までなかった。でもただ好きなだけではダメで、相手を思いやる気持ちが大切なのだ、ということにも気づかされた。
昼休み。明日からは試験なので、今日が終わると当分一緒に食事をすることができない。
「先輩、上柳さんのことを教えてくれませんか?」
うっ、痛いところを突いてくる。でも、土曜の勉強会でのことは兼古先輩から聞いていたので、話をしなければ、と思った。
「彼女のことには、僕にも責任があると思う。僕はまだ演じることに慣れていなくて、その切り替えがうまくできなかった。それに・・・人付き合いにも慣れていなくて、どう接したらいいのか分からないところもあった。でも、今回大きく違うのは、僕は君のことが好きで、守ってあげたいと思っていることだ。君を追い詰めたりしない、何かあったらすぐに言ってほしい」
友達から好意を持たれることは嬉しいことだけど、それに応えることができない場合には重荷になる。でも今回はお互いに好きなわけだし、これから楽しみ・・・な、はずだったのに。
「あの、その情熱的なセリフ、ちょっと控えてもらえませんか?」
彼女が恥ずかしそうに言う。・・・え?何?
「先輩は言い慣れているのかもしれないですけど、あんまりそうやって好きだを連発されると、ドキドキし過ぎちゃって、どうしたらいいのか分からなくなるんです。先輩の気持ちは十分分かりましたから、ね」
あ・・・、確かに、昨日は僕の瞳をずっと見つめてくれた深雪なのに、また顔を上げてくれなくなってしまっている。
「ゴメン、追い詰めてしまっているのは、この僕か」
「ああ・・・いえ、あの、そういうわけじゃないんですけど、全国大会のこともありますから、そんなに浮かれてもいられないなって思って」
そうだね、僕たちにはまず全国大会が大事だ。兄妹役を演じるには、ほどよい距離感が必要、か。
「じゃあ、試験が終わるまでの分、ハグさせて」
今はハグと軽いキスだけにとどめておこう。そのほうが彼女も喜ぶから。
「あの・・・、成績があまりよくないんです。すみません」
え?そうなの?