しょうがないから、加藤に聞いてみた。
「僕の意思表示は普通?過剰?それとも足りない?」
「仕事でのことは私の口からは申し上げられませんが、側近の立場からは、足りない、と申し上げるべきでしょうね。ただ私には、沢渡さんのコンディションはおっしゃっていただかなくても分かりますので、このままでもよろしいかと思いますが」
はあ、足りない、とは困った。やっぱり環境が違うからかなあと思っていたら、たまたま殿下と二人になる機会があったので、殿下にも伺ってみた。すると、
「僕としては頼もしいと感じているけどね、どうしてそんなことを聞くの?」
とおっしゃり、これまでの経緯を話すことになったわけだけど、
「僕はあまり口に出さないほうだなあ。気がついたら一緒にいたって感じだから、あまり積極的なアプローチをしたわけではない。ただ、好きだって言ってあげると喜ぶことは確かだよ。女の子はそういうのをきちんと言葉で聞きたいみたい。でも、深雪ちゃんはまだ若いからね、その迫力に負けてしまうんだろうね。・・・沢渡くんから、好きだ、なんて言われたら、僕だってドキドキするよ」
ちょっと殿下!と思ったら、冗談だけどね、と返された。・・・もう、お願いしますよ、殿下。
「僕としてはね、彼女が求めているものを与えてあげられるような男になりたいと思っているよ。それでなくてもいつも寂しい思いをさせているわけだから、些細な変化を察知して、言われる前に差し出す。彼女のために最高の男にならないとね」
あー。殿下の大人ぶりに、僕は白旗を上げるしかなかった。そうだ、僕が好きだということをいくらアピールしても仕方がない。彼女を受け止めてあげられるだけの男にならないと。
仕事が終わってもまっすぐ帰る気がしなくて、結城の部屋を訪れた。
「どうした?元気がないな。恋の悩みか?」
結城ですら、相手の変化を敏感に感じ取っているのに、僕はいったい・・・。
「そんな男を誰が好きになる?いい男が台無しだぞ。・・・ほら、こっちに来い」
結城は当たり前のように僕を抱き寄せて、軽くキスをした。
「・・・もう、そういうのを結城が教えるから、彼女を困らせる羽目になったんだよ」
「は?何のことだ?」
「僕たちの間では普通のことでも、高校生の女の子には刺激が強すぎるってことだよ」
結城だけじゃない、初めて付き合ったのが有紗さんだというのも関係がありそうだ。
「そうか?高校生の男には強いどころか、受け入れられているみたいだぞ。・・・だから、育て方にもよるってわけだ。自分好みに育てるっていうのも面白いぞ」
・・・そういう考え方もあるのか。